IT業界の35歳定年説は本当?

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就職活動を進めるうえで、「IT業界は35歳になると第一線から外される」という噂を耳にしたことがあるかもしれません。これは「35歳定年説」と呼ばれ、長年インターネット上や一部のメディアで語られてきました。

しかし、これは事実なのでしょうか? 本記事では、IT業界を取り巻く現状と、企業が求める人材像の変化に注目しながら、本質的にこの“35歳定年説”が意味するところを考察していきます。

1.なぜ「35歳定年説」が生まれたのか?

1-1. 技術の進歩スピードが速い

IT業界の特徴といえば、技術革新の速さです。プログラミング言語やフレームワークは日進月歩で進化し、数年前の技術があっという間に陳腐化することもしばしば。若手エンジニアのほうが最新技術の吸収が早いといったイメージから、「35歳を超えると新しい技術についていけないのでは?」という懸念が生じやすくなりました。

1-2. 体力・長時間労働のイメージ

かつてのIT業界は“深夜までの残業や徹夜作業が当たり前”という風潮もありました。若手であればなんとか体力でカバーできる反面、年齢を重ねるほど長時間労働が辛くなるという現実があり、結果として「若手でなければ活躍しにくい業界」として見られがちでした。

1-3. 過去の雇用慣行や組織構造

ITバブル期以降、日本のIT企業は大量採用を行いながら、スキルが限定された人材を下請けやSES(システムエンジニアリングサービス)で使う雇用形態が多く存在しました。新卒や若手は重宝される一方、経験を積んだ30代以降の人材が高コストとみなされ、人件費削減の対象になるケースも珍しくありませんでした。そのような背景が「35歳定年説」を強化した面があります。

2.実態としての「35歳定年」は存在するのか?

2-1. 定年どころか“重宝される”ケースも増加

最新動向をみると、35歳前後の人材が一気に切り捨てられる、という状況は必ずしも当てはまりません。むしろシニアエンジニアやプロジェクトマネージャーの需要は高まっており、優秀な人材であれば35歳を過ぎても高い報酬を得られる企業は数多くあります。特に海外IT企業では年齢よりもスキルや成果が重視される傾向が強く、大企業やスタートアップを問わず、マネジメント力・技術力のある人材は重宝される時代になっています。

2-2. キャリアチェンジや転職市場の成熟

日本でも転職市場が成熟し、中途採用が一般化しています。IT業界においては、プロジェクト管理スキルやアーキテクチャ設計といった高度なノウハウを持つ30代・40代が転職市場で高評価を得ることもしばしばです。企業にとっては、即戦力となる経験豊富な人材を採用するメリットが大きく、年齢というよりは「どのようなスキル・実績を持っているか」が重要視されるようになりました。

2-3. 学び続ける意識があるかどうか

IT業界は技術革新のスピードが速いため、学びを止めるとスキルが陳腐化しやすいのは確かです。しかし逆に、キャリアの長さに比例して、新しい技術や手法を積極的に取り入れられる人は、年齢を問わず評価される傾向にあります。自己学習や新技術へのキャッチアップを継続できるかどうかが、キャリアの寿命を大きく左右するといえるでしょう。

3.企業が求める本質的な人材要件

3-1. 複合スキル(T字型スキル)

IT業界では、専門領域の深い知識(vertical)と広範囲の技術・業務知識(horizontal)を掛け合わせた“T字型スキル”が評価されます。プロジェクトを円滑に進めるうえで、コミュニケーション能力やプロジェクトマネジメントスキル、ビジネス理解といった複合スキルが必須になってきています。30代以降は、若手のときとは異なる“深さ”と“広さ”を武器に活躍することが可能です。

3-2. 課題解決力とマネジメント力

大規模なプロジェクトや新規事業の立ち上げでは、テクニカルなスキルだけではなく、チームビルディングや対人調整といったソフトスキルが求められます。課題を見つけ、ステークホルダーを巻き込みながら解決へ導いていくリーダーシップは、経験を積んだ30代・40代だからこそ身につけているケースが多いのです。

3-3. 変化対応力・学び続ける姿勢

どの業界にもいえることですが、特にIT業界においては変化への適応力と学び続ける姿勢が重要です。35歳を超えても、最新技術の勉強会や資格取得、社内外のコミュニティ活動を通じて情報収集を怠らない人材は高く評価されます。企業が求めるのは「年齢に関係なく、常にアップデートを怠らない」人材なのです。

4.就職活動・キャリア形成で意識したいこと

4-1. 若手のうちから“専門性+α”を磨く

20代のうちはプログラミングスキルやインフラ、デザインなど特定領域をしっかり極めつつ、業務で必要な横断的スキルも同時に養うのが理想です。技術力に加え、コミュニケーション力・問題解決力を意識的に身につけることで、キャリアの幅を広げられます。

4-2. 学習の習慣をルーティン化する

ITのトレンドは刻々と変化するため、学習を継続することが不可欠です。オンライン学習プラットフォームを活用して新しい技術に触れたり、定期的に社外の勉強会に参加したりする習慣を早いうちから身につけておくと、35歳以降になっても“アップデートし続けられる人材”として活躍できます。

4-3. 30代以降は“組織づくり”や“マネジメント”へシフト

エンジニアとして技術力を高める道もあれば、プロジェクトマネージャーや経営層と連携する立場へシフトしていく道もあります。30代以降はマネジメント力や部下育成、経営視点で物事を捉える力も大切になります。「自分はどのポジションで、どのような価値を提供したいのか」を明確にし、キャリアの方向性を定期的に見直すことが重要です。


5.まとめ:IT業界の“35歳定年説”の本質

IT業界には「35歳定年説」という言葉が根強く残っていますが、実態としては単なる“噂”にすぎない部分が大きいといえます。むしろ35歳以降でも、技術力やマネジメント力を兼ね備えた人材は企業において重要なポジションを担います。真の問題は「年齢」にあるのではなく、「どれだけ学び続け、変化に適応できるか」です。

就活生としては、業界の噂に惑わされず、長期的に成長し続けられるキャリアパスを描くことが大切です。テクノロジーの進化が止まらない現代において、若さだけで評価される時代は終わりに近づいています。“生涯エンジニア”という言葉もあるように、学びを継続し、自身の価値を高めることで、年齢を重ねてもIT業界で活躍し続けることは十分可能です。35歳以降のキャリアこそが、真の勝負どころともいえるでしょう。

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