本記事では、IT業界に関心を持ったときに気になる「会社選び」や「就職活動の軸」を考える際のヒントとして、『「いい会社」はどこにある?』(渡邉 正裕著、ダイヤモンド社、2022年12月01日刊)を取り上げます。
本書は、ただ漠然と「いい会社に入りたい」と願う人に対して、「では、その“いい会社”とは具体的に何を指しているのか?」「どうやって見つければいいのか?」を丁寧に教えてくれる一冊です。特に文系出身でIT業界が未経験の方にとっては、企業の見極め方の軸や、社会人としてキャリアをスタートさせる際の基準を考えるうえでも大いに参考になるでしょう。
本記事では、本書の内容や特徴を紹介するとともに、本書をどのようにIT業界への就活に活かすかについても解説します。
1. 書籍の概要
1.1 タイトル
- 『「いい会社」はどこにある?』
1.2 著者・出版社
- 著者:渡邉 正裕
- 出版社:ダイヤモンド社
- 出版年月:2022年12月01日
著者の渡邉正裕氏は、ビジネス関連の調査や情報発信に携わってきた経歴を持ち、企業の評価や経営分析を数多く行ってきています。そのため、本書でも企業の内情に深く切り込みながら「いい会社」について多角的に解説しています。
1.3 本書が取り扱う主な内容
本書では、「いい会社」とは一体何なのかを多角的に考察しています。一般的には、給与や福利厚生などの条件が良いかどうか、あるいは社風や働きやすさなどで「いい会社」と判断することが多いでしょう。しかし著者は、それらの表面的な条件だけではなく、“社会にとってどんな価値を提供しているのか” “社員をどのように育成し、活躍させているのか”など、企業が本質的に目指していることや、その実態、社会的貢献度といった視点でも「会社の良さ」を測るべきだと説きます。
さらに本書では、多様な企業事例や統計データを用いて、「企業を見極める際に重要なポイント」を紹介しています。その際、単なる理想論ではなく、就活生や転職希望者が実際に参考にできるような具体的な視点が示されているのが特長です。たとえば、「採用情報から読み取れる真意」「社員に求められる資質・姿勢」「企業が掲げる理念と実際の行動の関係性」といった観点が挙げられます。
1.4 本書の特徴
- 多面的な視点から「いい会社」を定義している
給与や福利厚生、離職率などの数値だけでなく、企業文化や社会的役割、社員との関係性、さらに将来性などの定性面も含め、「いい会社」を総合的に捉えています。 - 具体的なデータや事例を豊富に紹介
企業ランキングやインタビュー、社内制度の具体例などが数多く掲載されており、単なる精神論や理想論にとどまらず、実践的で説得力のある内容となっています。 - 読者が主体的に「会社を見極める軸」を持てるように設計
「どういう会社が“いい会社”と感じられるかは人それぞれ」であることを前提に、読者自身が自分の価値観を明確化し、企業を比較検討するためのフレームワークを提示しています。 - 就活・転職活動を経た先のキャリア形成にまで踏み込んでいる
「就活で会社を選ぶ」ことだけではなく、その先の働き方や社会への貢献を踏まえたキャリア形成を意識したアドバイスが多数示されています。
2. おすすめポイント
ここでは、本書『「いい会社」はどこにある?』をおすすめできるポイントを4つに絞ってご紹介します。
2.1 自身の価値観を整理するヒントが豊富
「いい会社」を考える上で大切なのは、「そもそも自分は何を大事にしているのか」という内省です。本書では、給料・福利厚生・社会貢献・働き方・社員の成長環境など、多面的な切り口を提供してくれます。読者自身が重要視する要素を抽出しやすいように誘導してくれる内容になっており、「自分が何を軸として会社を選びたいのか」を深く掘り下げるきっかけになるでしょう。
2.2 社会貢献とビジネスの両立を説く
著者は「企業が社会的存在としての役割を果たしながら、ビジネスとしてもうまく回していくことが、いい会社の条件の一つ」だと説きます。たとえば業績だけを重視するわけでもなく、かといって社会貢献に偏りすぎるわけでもない。両者がバランスよく成り立つことが、社員のモチベーションを高め、ひいては企業のブランド価値向上や成長にもつながるというわけです。IT業界でも、事業の社会的インパクトやDX推進による社会課題解決などが求められていますから、就活生としてはこの視点を持つことが今後のキャリア選択にも大いに役立ちます。
2.3 具体的な企業事例を通じたリアルな視点
本書には複数の企業事例やインタビューが登場し、「実際にこういう取り組みをしている会社があるんだ」というリアルな視点を得ることができます。それらは規模や業種がさまざまで、一見すると自分が興味のない分野に思えるかもしれません。しかし、そこに共通する経営理念や人材育成方針などを読み解くことで、業種を超えた企業選びの基準を学べます。IT企業を志望する場合でも、“根底にある経営者の姿勢”や“企業文化”を見る目を養うことができるはずです。
2.4 「入社後のギャップ」を防ぐための具体策がわかる
就活生が「いい会社」だと思って入社しても、実際に働き始めてみると「思っていたのと違う…」というギャップを感じることは珍しくありません。本書では採用ページや会社説明会の情報を「そのまま信じてしまうのではなく、どのように読み解けばよいのか」といった具体的なポイントを示してくれています。企業研究の方法、質問の仕方、情報収集のコツなどが丁寧に書かれており、「入社後のギャップ」を減らすヒントになります。
3. 文系・未経験からのIT就活への活かし方
次に、文系出身・IT未経験の方が本書の内容をどのように就活へ活かすかについて、4つの観点を挙げて解説します。
3.1 会社のビジョンや社会的意義を探る
IT業界といえども、多くの企業が「何のためにシステム開発を行っているのか」「どのような社会課題を解決しようとしているのか」というビジョンを持っています。本書で提唱されているように、給与面や働きやすさだけではなく、企業がどんな社会的意義を持って事業を展開しているのかに注目してみましょう。IT企業の場合は、DXを通じた業務効率化やデジタルサービスの提供などが社会に広く影響を与えることが多々あります。その事業ビジョンに共感できるかどうかは、入社後のモチベーションを左右する重要な要素です。
3.2 社員育成の仕組みやキャリアパスを調べる
文系・未経験からIT業界へ飛び込む方にとって、研修制度やOJTの仕組みが整っているかどうかは大きな関心事でしょう。本書が示す「いい会社」の条件の一つに、社員に対して投資を惜しまない姿勢が挙げられます。たとえば、新人研修があるか、メンター制度があるか、資格取得補助や勉強会など、どのように社員を育てていくのかを明示している企業は、未経験者にとって魅力的です。「社内でどう成長できるか」という視点で企業を見ることで、入社後の安心感にもつながります。
3.3 IT業界特有の働き方や将来性をチェック
IT業界は他の業界に比べて、リモートワークの普及やプロジェクトごとのチーム制など、働き方が比較的柔軟です。本書で強調される「いい会社」が持つ特徴の一つに“社員の多様性を尊重する”姿勢があります。IT企業においては、働き方の柔軟性や職場環境、福利厚生などが多種多様です。自分がどのような働き方を理想としているかを踏まえて、会社が実際にどんな体制を整えているかをチェックしましょう。またAI、クラウド、DXなどのキーワードを軸に、自社のサービスやプロダクトが今後どう発展していくのかを見極めることも重要です。
3.4 自分の強み・興味と企業の取り組みを重ね合わせる
文系出身・未経験とはいえ、「文章作成力」「コミュニケーション能力」「チームワーク」「マーケティングへの興味」など、強みや興味の領域があるはずです。本書で重視される「自分自身の価値観の整理」を踏まえ、企業が行うプロジェクトや扱う分野と自分の強みがどう結びつけられるかを考えてみましょう。IT企業の中には文系出身者を積極的に採用するところも多く、実際にプロジェクトの要件定義や調整といった、コミュニケーション力が求められる業務で活躍できるケースがあります。自分の強みをアピールする際にも、「いい会社」の視点と掛け合わせることで説得力を高めることができるでしょう。
4. まとめ
『「いい会社」はどこにある?』は、就職活動において「何をもって“いい会社”とするか」をしっかりと考えるきっかけを与えてくれます。その内容は、決して表面的な企業イメージや給与・待遇だけで判断せず、企業が持つビジョンや社会的存在意義、社員育成の姿勢、働きやすさなど、さまざまな観点を総合的に捉えることの重要性を強調しています。
文系・未経験からIT業界を志望する方にとって、本書は以下のようなメリットをもたらします。まず、企業選びの軸を自身の価値観や将来の目標と照らし合わせる大切さを学べること。そして、IT業界特有の働き方や将来性を見極める際に、企業の姿勢やビジョンをしっかり確かめる必要性を認識できることです。さらに、入社後のギャップを減らすための情報収集方法や、採用情報の読み解き方といった実践的なスキルも身につけるきっかけとなるでしょう。
就職活動は人生における大きな節目の一つですが、「どの企業を選ぶか」で将来のキャリアや仕事観が大きく変わる可能性があります。本書を通じて「自分に合ったいい会社」を見つけるためのヒントを得ていただきつつ、ぜひIT業界への就職・転職活動に役立ててください。自分が本当に納得できる企業でこそ、学びや成長を得ながら長期的なキャリアを築くことができるはずです。
みなさんが、自分にとっての「いい会社」を見つけられることを願っています。文系・未経験からのIT就活において、本書の視点を取り入れれば、より納得感のある企業選びを進められるでしょう。自分と企業の“相性”を見極めながら、ぜひ有意義な就職活動を行ってください。