本記事は、文系・未経験からIT業界への就職を考えている方々の視点を踏まえながら、海老原嗣生氏の『なぜ7割のエントリーシートは、読まずに捨てられるのか?』(東洋経済新報社)を紹介し、本書のエッセンスをどのように活かせるかをまとめた書評になります。
就職活動を進めるうえで、「エントリーシート(ES)がどのように評価されているか」「なぜ多くのESが選考で落とされてしまうのか」という疑問は多くの就活生にとって気になるポイントです。
本書では、その実態に対して人事の視点を交えながら明確なヒントが提示されており、特に文系・未経験からIT業界を目指す方にとっても有用な知見が得られるはずです。ぜひ参考にしてみてください。
1. 書籍の概要
1.1 タイトル
『なぜ7割のエントリーシートは、読まずに捨てられるのか?』
1.2 著者・出版社
- 著者:海老原嗣生(えびはら つぐお)
- 出版社:東洋経済新報社
- 出版年月:2015年01月16日頃
著者の海老原嗣生氏は人材業界での長年の経験を持ち、採用や人事に関する多くの著書を出版している人物です。実際の採用現場を深く知る立場から、就職・転職活動時に多くの応募者が陥りがちな“落とし穴”を分析し、解説をおこなっています。出版社の東洋経済新報社はビジネス系の書籍を多数手がけており、ビジネスパーソンや就活生に役立つ知識や情報を発信する出版社として定評があります。
1.3 本書が取り扱う主な内容
本書では、以下のようなテーマを中心に、企業の採用担当者がエントリーシートを読む(あるいは読まない)プロセスや、就活市場のリアルな現状が示されています。
- ESが“読まれない”理由と採用担当者の本音
・多くの企業がエントリーしてくる学生を大量にさばかなければならない現実
・短時間で判断せざるを得ない条件と採用担当者の視点 - エントリーシートの構成要素と評価ポイント
・自己PRや志望動機が実際にどう評価されているか
・説得力のある文章を書くための論理構成や具体例の示し方 - 企業が本当に求めている人材像
・「即戦力」だけではなく「会社とのマッチ度」も判断軸になる
・文系・理系の区別よりも、個人の資質や成長可能性の見極め - 面接やグループディスカッションとの関連
・ESとの整合性を面接でどう確認しているか
・ESの書き方や内容が後のステップでどのように影響するか
これらのポイントを通じて、採用担当者が「なぜESを読む(あるいは読まない)のか」を明らかにし、就活生がどのようにエントリーシートを作成すれば選考を突破しやすくなるのかを解説しているのが本書の大きな特徴です。
1.4 本書の特徴
- 採用担当者の視点をリアルに描いている
採用現場の内情が赤裸々に語られており、表面的なアドバイスだけでなく、実際の読み手が何を重視し、どこに注目しているのかが具体的に理解できます。 - 統計データや事例を豊富に用いている
説得力のある主張を展開するうえで、統計や具体的な事例が頻繁に登場します。これによって単なる著者の主観ではなく、客観的な根拠に基づいたアドバイスが得られます。 - エントリーシート以外の就活全般に通じる示唆
ESはあくまで採用プロセスの入り口です。本書には、ES作成のコツだけでなく、面接やインターンシップの活かし方、さらには企業研究の重要性など、就活全般にかかわるヒントが網羅されています。 - 文章が平易で読みやすい
人事専門用語や難解な理論を並べ立てるのではなく、就活生が理解しやすい形で書かれており、スッと内容が頭に入ってくるのも特徴です。
2. おすすめポイント
ここでは、本書を実際に手に取り、文系・未経験からIT業界を目指す就活生が注目してほしいポイントを4つ挙げます。
2.1 エントリーシートの“書き出し”の重要性がわかる
エントリーシートは基本的に数多くの応募書類の中で同じフォーマットが並びます。そこで最初の数行、いわゆる“書き出し”のインパクトによって読む側の興味を引けるかどうかが決まるという点は、本書で繰り返し強調されています。IT業界は技術志向に目が向きがちですが、“強みをストーリーとしてどう語るか”を意識するうえでのヒントが満載です。
2.2 企業研究を踏まえた“志望動機”の書き方が身につく
「なぜこの企業を選んだのか」をきちんと説明できるかがESの合否を左右する大きなポイントです。本書では、企業研究を浅く済ませたままの曖昧な志望動機がいかに不利かが、具体的なエピソードを通して示されています。文系でITに挑戦する方も、自分の関心や学びたい技術・業務領域を明確にし、企業独自のサービスやシステムの特徴と結びつける必要があります。
2.3 “読み手”の目線を意識した構成づくりが学べる
ESを書くとき、多くの就活生は「自分がアピールしたいこと」を羅列しがちですが、実際には「採用担当者が何を知りたいのか」を優先する必要があります。本書のなかでは、採用担当者がESを読むプロセスや、チェックするポイントを具体的に紹介しながら、論理性や簡潔さを求める人事担当者に寄り添った文章構成のコツを明かしています。
2.4 面接まで意識した“整合性”の作り方がわかる
ESと面接がまったく別々の評価項目になっているわけではなく、ESはその後の面接で検証される前提で書く必要があります。本書では、ESに書いた経験やスキルをどのように面接で深掘りされるのかを具体的に解説しており、「話を盛りすぎる」リスクや、「ネタの使い回し」の弱点など、就活経験者が実感しやすい注意点が示されます。IT業界の場合、テクニカルな部分は面接でさらに詳しく質問される可能性があるので、正直かつ整理された内容が求められる点を再認識できます。
3. 文系・未経験からのIT就活への活かし方
ここでは、文系・未経験でIT業界に興味を持ち、就職活動を進めたい方に向けた具体的な活かし方を4つにまとめました。
3.1 自分の強みを“IT×〇〇”の文脈で伝える練習をする
文系・未経験であっても、IT業界で求められるのは何もプログラミングスキルだけではありません。例えばコミュニケーション力や調整力、文章作成力など文系の強みを活かせる場面は多々あります。「自分の強み」を単なる自己PRで終わらせるのではなく、IT業界ならではのニーズ(ユーザー視点で考える力など)とつなげ、エントリーシートで具体的に示すことが重要です。本書に書かれている「読み手の目線を意識する」ポイントを踏まえ、IT業界でどう役立つかを論理的につなげましょう。
3.2 企業研究で“技術トレンド”だけでなく、“事業領域”を深堀りする
志望動機を書くうえで、単に「AIに興味があります」「Webサービスを作りたいです」という一般的なトレンドワードに終始してしまうと埋もれがちです。本書の指摘どおり、採用担当者は「どれだけ自社のビジネスを理解しているか」という点を見ています。文系・未経験だからこそ、個別の企業が提供しているサービスの差別化要因や、顧客の課題解決にどう寄与しているかに目を向け、“他社との比較”を盛り込むことで具体的かつ魅力的な志望動機を作成できます。
3.3 “IT業界に対する姿勢”を明確にし、長期的な視点を提示する
「未経験だけれど、すぐにスキルを身につけられます」というアピールは説得力に欠ける場合があります。特にIT業界では、技術が日進月歩で変化していくため、常に学び続ける姿勢やチームで協力してプロジェクトを進めるマインドが重視されます。本書で紹介されているように、「相手(企業)が見ている視点」を捉え、未経験なりの学習プランや、将来的にどのようなキャリアを築きたいのかを具体的に描き、ESに盛り込むことが大切です。
3.4 応募先や面接での“整合性チェック”を想定した準備を徹底する
ESに書かれた内容は「事実として面接で深掘りされる」ことを前提に用意しましょう。たとえば「学校のゼミで◯◯を研究した」と書いたならば、その内容を深く説明できるように準備しておく必要があります。また、IT業界の場合は「なぜ文系からITに?」という質問を受ける可能性が高いです。その答えがESの内容(学んできたこと・興味分野など)と矛盾していないかをチェックしておくことで、本書で言うところの“読み手(面接官)の視点”を意識した一貫性のあるアピールにつなげられます。
4. まとめ
海老原嗣生氏の『なぜ7割のエントリーシートは、読まずに捨てられるのか?』は、企業の採用プロセスをより深く知りたい就活生にとって非常に有益な一冊です。大量に集まるESを短時間でふるいにかける企業の実情から、評価される応募者の特徴、さらには面接・企業研究に至るまで、“人事・採用担当者の目線”を反映した具体的なアドバイスが詰まっています。
特に文系・未経験からIT業界を目指す方は、「自分には技術の知識が足りないから……」と尻込みしてしまうケースが珍しくありません。しかし、IT業界の採用担当者が見ているのは“問題解決力”“学び続ける姿勢”“コミュニケーション能力”など多岐にわたります。本書の“読み手目線”を重視する考え方を取り入れることで、自分の強みをIT業界の文脈に合わせて効果的にアピールする道筋が見えてくるでしょう。
エントリーシートはただの書類ではなく、面接やその後のキャリア形成につながる大切な“第一印象”を作るツールです。なぜ7割が読まれずに捨てられるのか、その背景を理解し、論理性や具体性をもって自己PRや志望動機を伝えることが重要です。本書で学んだポイントを押さえ、企業研究をしっかりおこない、面接に繋がる説得力のあるエントリーシートを書けるように準備を進めてください。文系・未経験という立場を活かし、IT業界での未来を切り拓くための一助となる一冊として強くおすすめします。