本記事は、『改訂版 採用側の本音を知れば就職面接は9割成功する』(KADOKAWA, 2023年9月1日刊)の書評記事です。
本書はタイトルにもある通り、採用担当者の“本音”に切り込んだ内容が特徴で、「こうしたら面接で好印象を持ってもらえる」といった小手先のテクニックだけでなく、「採用担当者が何を求めているのか」「企業がどのような人材を重宝するのか」といった根本的な部分まで解説しています。
ここでは、本書を読んで感じたポイントを整理し、「文系・未経験からIT業界へ進もうとしている皆さん」に特に役立ちそうな部分をピックアップしました。面接の基本を押さえつつ、IT業界ならではの視点も交えてお伝えします。ぜひ就職活動の参考にしてみてください。
1. 書籍の概要
1.1 タイトル
改訂版 採用側の本音を知れば就職面接は9割成功する
1.2 著者・出版社
- 著者:渡部 幸(わたべ みゆき)
- 出版社:KADOKAWA
- 発行日:2023年9月1日
本書は、就職・転職活動における「面接」の攻略法を中心に書かれた一冊です。初版から改訂を重ねるなかで、最新の採用事情やコロナ禍によるオンライン面接の普及、採用手法の変化などにあわせて情報をアップデートしており、2023年9月時点での採用市場のリアルが反映されています。
1.3 本書が取り扱う主な内容
- 採用側の視点・本音
- 「どんな人材に来てほしいのか」「面接ではどこを重点的に見ているのか」といった、採用担当者の実情を詳細に解説しています。
- 面接準備・自己分析
- 「自己紹介」や「志望動機」「自己PR」など、面接の定番テーマを取り扱いながら、どのように自分をアピールすれば効果的かを分かりやすく説明しています。
- 面接での振る舞い
- 話し方や表情、雰囲気作りなど“印象”に関わる要素だけでなく、オンライン面接やグループディスカッション、二次面接など選考段階ごとのポイントにも触れています。
- 採用プロセス全体
- 面接に受かるためだけではなく、書類選考やインターンシップ、内定後のフォローなど、採用活動全体の流れも視野に入れてアドバイスがされています。
1.4 本書の特徴
- 採用担当者の視点をとことん掘り下げている
採用担当者が、応募者にどんなところを期待するのか、逆に「どういうタイプの応募者は落ちやすいのか」といった踏み込んだ内容が明確に書かれているのが特徴です。企業の本音が理解できるため、面接対策の方針を立てやすくなります。 - 最新トレンドに対応した改訂版
オンライン面接が当たり前になってきた昨今の事情にも対応。服装やカメラの位置、話し方などの細かい部分までフォローされています。IT業界でもオンライン選考が一般的になっているため、リアル面接とオンライン面接の違いを把握する上でとても参考になるでしょう。 - 事例や具体例が多く、イメージしやすい
「履歴書にこう書くと採用担当者にはこう伝わる」「このように答えると面接官はこう受け取る」といった事例が豊富に載っています。自分の言葉でどのように伝えればいいかイメージしやすい点も、本書の魅力です。 - 多様な業界・企業規模への応用が可能
大手企業だけでなく、ベンチャー企業や中小企業、さらには業界ごとの違いにも言及があるため、どの企業形態を目指す場合でも応用しやすいつくりになっています。IT業界志望の方も含め、多角的に面接対策を学べる内容です。
2. おすすめポイント
ここからは、文系・未経験からIT業界を目指す方にも役立つ、本書のおすすめポイントを4つご紹介します。
2.1 採用担当者の「評価軸」が明確になる
就職面接の最大の悩みは、「企業が何を求めているのかわからない」という点でしょう。本書では、採用担当者が重視するポイントや採点の仕方が具体的に解説されています。例えば「志望動機の内容に一貫性があるか」「長期的に活躍してくれるビジョンが見えるか」「会社のカルチャーに合いそうか」といったチェック項目が紹介されており、それらを踏まえた対策を立てられます。文系・未経験の方は、“技術スキルが不足しているのでは”と不安になりがちですが、実は企業が面接で見ているのはスキルだけではありません。むしろ「人柄」や「将来性」を評価するケースも多いのです。本書を通じて、採用担当者が求める要素を明確に把握できれば、「自分が何を強みにして、どんな価値を提供できるか」を整理しやすくなります。
2.2 オンライン面接を踏まえた具体的アドバイス
ここ数年、IT企業に限らず多くの企業がオンライン面接を導入しています。リアル面接と異なり、カメラ越しでは表情の印象や声の通り方に気を遣う必要があります。本書では、オンライン面接特有の注意点について非常に具体的です。画面の映り方、カメラやマイクの設定、声のトーン、そして背景や照明の調整など、読んだその日から実践できるノウハウが盛りだくさん。特に「オンライン面接では、目線の置き方ひとつで印象が大きく左右される」という指摘は、多くの方にとって目からウロコでしょう。IT業界では、開発メンバーやクライアントとの打ち合わせをオンライン会議ツールで行う機会も増えています。面接対策と同時に「オンラインでのコミュニケーションスキルを磨く」という点でも、本書の内容を活かせます。
2.3 “人事が見落としがちな要素”を知ることで差がつく
「人事が見落としがちな要素を押さえると面接で有利になる」という考え方は、一見すると矛盾しているように思えます。しかし、企業によって人事の評価基準には偏りや癖が出ることは珍しくありません。本書では「どんな企業でも欲しがる“本質的なスキル”とは何か?」というところまで踏み込んで、読者に気づきを与えてくれます。例えばコミュニケーション力の定義は曖昧ですが、“プロジェクトマネジメントに役立つコミュニケーション力”や“調整力”など、IT業界ならではの視点に置き換えて考えることが可能です。こうした視点を押さえておくと、単なる「愛想の良さ」ではなく「相手の求める要素を的確に把握できる能力」をアピールしやすくなります。文系・未経験だからこそ持ち得る柔軟な視点を、面接でしっかり伝えられるようになるでしょう。
2.4 具体的なエピソードの作り方まで丁寧に解説
「自己PRのエピソードが作れない」「なかなか自分の経験を仕事に結びつけられない」という声は、文系・未経験からIT業界を目指す方の悩みとしてよく耳にします。本書では、自分の過去の体験をどのように整理し、面接官に伝えるべきかを「PREP法」や「STAR法」などのフレームワークに沿って紹介しています。
- PREP法:Point(結論) → Reason(理由) → Example(事例) → Point(結論)
- STAR法:Situation(状況) → Task(課題) → Action(行動) → Result(結果)
これらを活用することで、論理的かつ簡潔にエピソードを伝えられるようになり、説得力が高まります。日常でのちょっとした体験も、フレームワークを用いて整理すれば十分PR材料になるのです。とくにIT業界では、“論理的思考力”や“問題解決力”が重要視されるため、エピソードを論理的に構築する練習は大きなアドバンテージになるでしょう。
3. 文系・未経験からのIT就活への活かし方
ここからは、実際に文系・未経験でIT業界を目指す方が、本書の内容をどう活かせるのか、具体的に4つのポイントに分けてお伝えします。
3.1 スキル以外の「キャラクター」を明確に打ち出す
IT業界では確かにプログラミングなどの専門スキルが重視される場面も多いですが、未経験の場合はそこを過度に不安視する必要はありません。それよりも、企業が期待するのは「今後の伸びしろ」や「組織になじみ、チームを盛り上げられるか」という要素です。本書を参考に、採用担当者がどんな“人物像”を理想としているのかを把握し、自分のキャラクターを面接でしっかり示しましょう。例えば「周囲と協力して物事をやり遂げる力」や「自分で調べて学習する姿勢」などを具体例とともにアピールすることで、“ITスキルはまだ浅くても成長できる人材”として評価を高められます。
3.2 オンライン面接で好印象を与える練習をしておく
本書にはオンライン面接の対策が充実しているため、ぜひ実践してみてください。具体的にはカメラのアングルやマイクのチェックを事前に何度も繰り返し行い、友人や家族との模擬面接で表情や声のトーンを確認する、といった練習が効果的です。IT業界では、リモートワークやオンライン会議ツールでの打ち合わせが普及しています。オンライン越しでもハキハキと意見を述べられ、相手との距離感をうまく調整できる人は、業務面でも頼られる存在になれます。面接対策と同時に、入社後の仕事にも活きるスキルだと考えて取り組むとよいでしょう。
3.3 「エピソード整理」でIT業界の関連性を見いだす
文系・未経験だと、大学時代のサークル活動やアルバイト、あるいは趣味の経験などから、ITに直接関係しそうな話題を探すのが難しいと思われるかもしれません。しかし本書で紹介されているフレームワーク(PREP法・STAR法など)を活用すれば、意外なところから面接官を惹きつけるエピソードが生まれることがあります。例えばサークル活動での会計管理を任されていた経験を、「データの正確性を重視する姿勢」「周囲とのコミュニケーションを図りながらチームの運営に貢献した姿勢」と結びつけて語れば、IT業界で必要とされるプロジェクト管理力や調整力につながるのです。
文系ならではの得意分野も、見方を変えればIT分野に応用できる可能性が見えてきます。本書のエピソード作成の仕方をそのまま真似るだけでも、新たな角度で自己分析ができます。
3.4 “相手目線”に立ったコミュニケーションの習慣化
本書を通じて改めて学べるのは、「採用担当者の視点に立ったとき、どんな説明がわかりやすいか」という“相手目線”の重要性です。これはIT業界で活躍するためにも欠かせない視点です。エンジニア同士の打ち合わせに限らず、クライアントや他部署との連携においても、「相手が求める情報は何か?」「どうすればスムーズに協力体制を築けるか?」を考えて行動できる人が重宝されます。
面接対策は、“相手に伝わりやすい情報整理と伝達”を学ぶよい機会です。本書に書かれている「面接官(相手)の求めるものを意識する」姿勢を、ぜひ普段の学習や人間関係にも取り入れてみてください。たとえばプレゼンやレポートのまとめ方も、同じように相手視点を意識して構成すると、途端にクオリティが高くなります。
4. まとめ
『改訂版 採用側の本音を知れば就職面接は9割成功する』は、タイトルのとおり採用担当者の本音を知ることから始まり、その視点を踏まえて面接・自己PRを組み立てられるようになる一冊です。文系・未経験からIT業界を目指す場合、どうしてもプログラミングスキルや専門知識に目が行きがちですが、採用プロセス全体を考えると、それらはあくまでも要素のひとつ。面接で大きくモノを言うのは、「人物としての魅力」や「ポテンシャル」だということを、本書は採用担当者の視点から具体的に教えてくれます。
また、本書ではオンライン面接や質問の答え方など、すぐに使える実践的なテクニックも数多く紹介されていますが、真の強みは「自分の経験と採用担当者のニーズを結びつける思考プロセス」を身につけさせてくれる点にあります。採用側が見ている部分を理解し、そこに対して自分は何を提供できるかを整理できるようになれば、IT業界への第一歩は確実に近づくはずです。
IT業界への就活は一見ハードルが高く見えますが、実は文系の方でも活躍のチャンスは十分あります。社会人経験のない方や転職を考えている方も、これからの成長を期待して採用してくれる企業は多いです。その際に大切なのは、採用担当者を「納得」させる情報提供と、「この人なら活躍してくれそう」と思わせるエピソード構成。本書を片手に、自分の経験や強みを見つめ直し、“面接を通じて自分の良さをいかに伝えるか”を磨いてみてください。きっと今後の就活に大きなメリットをもたらしてくれることでしょう。
これからIT業界への就職活動を始める皆さんにとって、この書籍の内容が少しでもヒントになれば幸いです。ぜひ本書の知識を吸収しつつ、IT業界ならではの視点を組み合わせて、自分らしい魅力的なアピールに結びつけてください。皆さんの健闘を心から応援しています。