IT業界に興味を持った方や、文系・未経験でこれからIT企業への就職を目指す方の中には、「SIer営業っていったいどんなことをしているのだろう?」と疑問を持たれる方も少なくないでしょう。
本記事では、SIer営業がどのように1日を過ごしているのか、その仕事の流れを朝から夜まで順を追ってご紹介します。実際の勤務形態や企業規模、担当するプロジェクトやクライアントの種類によっては多少異なる場合もありますが、SIer営業の1日のイメージをつかむ一助になれば幸いです。
1. 朝のスタート:情報収集とメールチェック
7:30~8:00頃:出社/在宅勤務の準備
近年はリモートワークを導入している企業も多いため、SIer営業でも週のうち数日は在宅勤務というケースも増えています。出社の場合は、朝の通勤時間を利用してスマートフォンでニュースサイトや業界動向をチェックすることが多いでしょう。また、在宅勤務の場合は、勤務開始前にPCを立ち上げ、まずは社内チャットの未読やメールをざっと確認するところから一日を始めます。
8:00~9:00頃:メールチェック・1日のタスク整理
会社に着いて一息ついたら、まずはメールと社内チャットのチェックからスタート。クライアントからの問い合わせや社内連絡など、前日の夕方以降に届いた連絡事項に目を通し、優先度の高いものから返信していきます。SIer営業の仕事は、社内外のやり取りが多いため、すばやいレスポンスと的確な情報共有が欠かせません。
その後、スケジュール表やタスク管理ツール(Excel、プロジェクト管理ソフト、スケジューラーなど)を見ながら、今日行うべき業務を洗い出し、優先順位を決めます。クライアント訪問やオンラインミーティングの時間、準備しなければならない資料の締め切りなど、時間とタスクが重ならないようしっかり管理することが大切です。
2. 午前中の営業活動:クライアント対応と提案準備
9:00~10:00頃:社内打ち合わせ/チームミーティング
SIerの営業が担当する案件は、エンジニア、プロジェクトマネージャー、技術サポートチームなど複数の部署にまたがることが一般的です。そのため、朝イチに短時間のミーティングを設けて、進行中のプロジェクト状況や案件ごとの課題点などを共有することがあります。ここでは前日の作業実績や問題点の報告、今日のタスクや納期の確認などを行い、関係者間で抜け漏れのないよう情報を整理しておく必要があります。
10:00~11:00頃:クライアントとのコミュニケーション(電話/メール/オンライン会議)
社内打ち合わせが終わったら、クライアントに連絡を入れる時間を確保します。前日のうちに積み残していた問い合わせ対応や、新規案件の見積依頼への回答、技術的な質問をエンジニアと連携して回答するなど、細やかなコミュニケーションが求められます。もしクライアントの要望や予算、納期などに変更があった場合、早めに共有することで、開発側のスケジュールにも影響が出ないように調整を行うことが重要です。
また、オンライン会議システム(Zoom、Teams、Google Meetなど)を使い、クライアントやチームメンバーとのすり合わせを行うことも珍しくありません。短い時間でも口頭で直接打ち合わせをすると、細かいニュアンスや課題を早期に把握できます。SIer営業は、こうした細やかなやり取りを積み重ね、クライアントとの信頼関係を維持・発展させていきます。
11:00~12:00頃:提案資料の準備/訪問準備
午後からのクライアント訪問やオンラインプレゼンがある場合、その準備に時間を割きます。提案資料やプロジェクトの進捗報告資料を作成し、必要に応じて関連部門と最終チェックを行いましょう。パワーポイントで作成することが多いですが、大規模案件ではWordやExcelを組み合わせて構成資料を作ることもあります。特に、文系・未経験からIT営業に携わる方の場合は、最初は用語や技術の理解に苦労するかもしれません。
しかし、エンジニアの専門知識を借りながら自分なりに資料をまとめ、クライアントが分かりやすい形で情報を提示するスキルが求められます。ここで大切なのは、“技術的な話”をただ並べるのではなく、クライアントの抱える課題や要望にどのように寄り添い、ビジネス的価値を生み出せるのかを示すことです。
3. 昼休み:リフレッシュと情報交換
12:00~13:00頃:昼食/小休憩
忙しいSIer営業の仕事の中で、昼食はしっかりとってリフレッシュすることが大切です。オフィス勤務の場合は、同僚のエンジニアや他部署のメンバーと一緒にランチに出かけ、情報交換をするケースもあれば、外出先でクライアント近くの飲食店に入ることもあります。リモートワークの場合でも、意識的に休憩を取り、気分転換を図ることで午後の集中力を高められます。
また、この時間帯を利用して業界のニュースサイトやSNS、IT関連メディアをチェックしてトレンドを追うことも大切です。SIer営業は常に最新の技術動向や社会情勢を把握する必要があります。自分の担当範囲だけでなく、他の業種や業界でどのようなIT活用が進んでいるのかを知ることで、クライアントへの提案の幅を広げるきっかけにもなるでしょう。
4. 午後の営業活動:商談・提案・プレゼンテーション
13:00~14:00頃:クライアント先へ移動/オンライン商談に参加
昼食後は、本格的な営業活動が始まる時間帯です。クライアント先へ訪問する場合、13時前後に現地に到着するように移動を開始します。オンライン商談の場合でも、午後イチから会議が設定されることが多いため、あらかじめ接続テストや資料共有などの準備を整えます。
14:00~15:00頃:クライアントとの商談・打ち合わせ
実際の商談では、クライアントの担当者(IT部門や情報システム部門、または経営層など)を前に、あらかじめ作成した提案資料をもとにプレゼンテーションを行います。特にSIer営業の場合は、クライアントの業務全体を理解し、その課題や要望に合わせたITソリューションを提供することが求められます。
- ヒアリング: まずはクライアントが抱える問題点やゴールを改めて確認し、新たな要望や制約条件が出ていないかを確認します。
- 提案: 事前に準備した資料を使い、ソリューションの概要・導入メリット・費用対効果・スケジュールなどを具体的に説明します。
- 質疑応答/ディスカッション: クライアント側が抱く疑問点や懸念点をクリアにしていくことが、商談成功の鍵になります。専門的な技術的質問が出た場合、営業一人で回答しきれないこともあるので、エンジニアなどの技術担当と協力しながらフォローしていきます。
15:00~16:00頃:社内外との調整業務・移動
商談や打ち合わせが終わると、その内容を整理し、社内の関係部署へ速やかに共有します。プロジェクトマネージャーやエンジニアには、要件や納期の変更点、追加になりそうな開発工数などを報告し、見積内容やスケジュールへの影響を確認します。クライアントからは「この点をもっと深掘りしてほしい」という要望が出ることもあり、追加の提案資料を作成する段取りを組むこともあるでしょう。
訪問先から別のクライアントへ移動する場合もあれば、一旦オフィスへ戻る/在宅勤務では引き続きオンラインでミーティングが入る、など多様なケースがあります。SIer営業は、こうした移動時間やスキマ時間を使って、メール返信や社内連絡、案件の進捗管理を行うなど、時間を有効活用していきます。
5. 夕方の業務:社内ミーティングと提案書作成
16:00~17:00頃:社内ミーティング・案件進捗報告
夕方になると、エンジニアやプロジェクトマネージャー、あるいは他の営業メンバーとのチームミーティングが行われることがあります。ここでは、以下のようなポイントを共有・相談するケースが多いです。
- 進行中案件のステータス報告: 納品日やテスト日程の確認、問題点・リスクの洗い出し。
- 新規案件の見積もり検討: クライアントへ提示する見積額や工期をどうするか、チームで検討・試算。
- 既存案件の拡張提案: 追加機能やサポート契約の更新など、次のビジネスチャンスを見据えた検討。
情報を整理して、すぐにクライアントに連絡が必要な内容があれば、終了後に速やかに対応します。ITプロジェクトはスケジュール変更や仕様調整が起こりやすいため、営業の立場から見積や要件を精査し、常に最新情報をアップデートすることが大切です。
17:00~18:00頃:提案書・見積書作成/契約書のチェック
夕方の時間帯は、提案書・見積書・契約書などの作成や確認作業に当てられることが多いです。特にSIerの営業にとって重要となるのは見積もりの妥当性。プロジェクトにかかる工数や必要となるサーバーなどのインフラ費用、開発ツールやライセンス費用などを精査し、クライアントの予算感と合うように調整します。また、契約書の条文を細かく確認し、リスクや責任範囲が明確に定義されているかどうかも注意深くチェックします。
文系・未経験からIT業界へ進んだ方の場合、初めは技術用語や業界特有のコスト構造に戸惑うこともあるかもしれません。しかし、何度も提案・見積作成を繰り返していくうちに、プロジェクトに必要な工程とその工数がイメージできるようになります。分からないことや疑問点があれば、エンジニアや上司に積極的に質問し、経験を積み重ねることでスキルアップを図りましょう。
6. 退社前のまとめ:振り返りと翌日の準備
18:00~19:00頃:メール最終チェック・翌日のスケジュール確認
一日の終わりには、再度メールやチャットをチェックして、緊急の連絡がないか確認します。クライアントから追加の依頼や質問が来ている場合や、プロジェクトメンバーから相談が寄せられている場合は、翌日の優先タスクとしてリストアップします。
また、翌日以降のスケジュールを確認し、会議や商談に必要な資料や情報収集が終わっているかを確認することも重要です。営業は「明日の準備をどれだけ前日にしておけるか」で一日の効率や成果が変わってきます。特にプレゼンや大事なクライアントとの打ち合わせがある場合は、時間がかかる資料作りや調整を前倒しで行うように意識しましょう。
19:00~20:00頃:退社/残業対応
SIer営業はプロジェクトの進行状況や月末・四半期末の商談集中など、案件の繁忙期には残業が増えることも少なくありません。ただし、近年は働き方改革やリモートワークの推進により、業務効率化や時間管理を徹底して、なるべく定時退社を目指す企業が増えています。
退社後はプライベートの時間を過ごしたり、勉強会やセミナーに参加したりする人もいます。IT業界は技術進歩が早いため、営業であっても最新の技術動向やビジネススキルを学ぶ場を設けることが自身のキャリアアップに繋がります。勉強会やセミナーを通じて得た知識やネットワークは、今後の提案活動に大いに役立つでしょう。
7. SIer営業のやりがいと必要なスキル
SIer営業は、単なる「モノ売り」ではなく、クライアントの課題解決に深く関わるポジションです。ITシステムの提案を通じて企業活動を支援し、ときには組織改革に近い部分まで踏み込み、クライアントのビジネス発展に貢献できることが大きなやりがいとなります。一方で、プロジェクト管理や顧客折衝、社内調整など多岐にわたる業務が求められるため、幅広いスキルセットが必要です。
- コミュニケーション能力: 社内外のステークホルダーと円滑にやり取りし、関係を構築する力。
- IT知識と最新トレンド把握: 文系・未経験であっても、基礎的なIT知識を習得し、変化の激しいITトレンドを継続的に学ぶ姿勢が重要。
- 問題解決能力: クライアントの業務をヒアリングし、課題を整理したうえでソリューションの提案に落とし込む力。
- 提案力とプレゼンテーション力: クライアントにとってのメリットを分かりやすく伝え、納得してもらうスキル。
- スケジュール管理と調整力: ITプロジェクトは多くの人員と工程が関わるため、進捗の管理や各担当者との調整が重要。
こうしたスキルは、日々の業務の中で少しずつ身につけることができます。また、未経験からでも、学習意欲を持って技術や業界知識を学び続けることで、クライアントにも信頼してもらいやすくなります。
8. まとめ
SIer営業の1日は、朝の情報収集やメールチェックに始まり、午前中に社内打ち合わせやクライアントとのコミュニケーション、午後からの商談や提案活動、そして夕方以降の社内調整や資料作成、最終的には翌日の準備まで、多岐にわたる業務によって構成されています。クライアントの課題に合わせて最適なITソリューションを提案するためには、営業としてのヒアリング力やプレゼンテーション力だけでなく、基本的なIT知識やプロジェクト管理能力など、幅広いスキルを磨くことが求められます。
本記事でご紹介した1日の流れはあくまで一例ですが、SIer営業として働く上での大枠のイメージを得ることができたでしょうか。実際の現場ではチームや担当領域によって多様な経験が待っています。みなさんがIT業界で活躍し、クライアントの「頼れるパートナー」として信頼を築ける営業になれるよう、ぜひチャレンジを続けてください。