就活でセクハラされたらどうする?

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就職活動をしていると、企業研究や面接の準備、エントリーシートの作成など、やるべきことはたくさんあります。特に文系・未経験からIT業界を目指す方にとっては、新しい業界や技術への理解を深めながらアピールするポイントを模索する作業は大変ですよね。そんな中で、もしも就活の過程でセクハラ(セクシュアルハラスメント)と思われる行為を受けたら、どうすればいいのでしょうか。

今回は、「就活でセクハラされたらどうする?」をテーマに、セクハラの具体的な例や対策、相談先などを詳しく解説していきます。自分を守るための知識として、ぜひ参考にしてみてください。

1.就活におけるセクハラとは何か?

1-1.セクハラの定義

セクハラ(セクシュアルハラスメント)とは、相手の意思に反する性的な言動や行為のことで、相手に不快感や苦痛を与えるものを指します。日本では男女雇用機会均等法などでセクハラ防止の取り組みが定められており、企業は従業員へのセクハラを防止・解決する義務があります。しかし、就活生という「まだ従業員ではない」段階であっても、企業側の担当者や面接官の言動がセクハラにあたる場合は違法性が問われる可能性があります。

1-2.就活生が受けやすいセクハラ

就活の場では、特に面接や懇親会などで、企業担当者・先輩社員などがセクハラにあたる発言や行動を行うケースがあります。たとえば、次のような言動はセクハラとして問題視されることが多いです。

  • 容姿や服装、体型に言及する
    「スカート短いね」「もっと女性らしい服装で来てほしい」「男性なんだからもっとガッシリしてないと」など、外見や体型に不快なコメントをする。
  • 恋愛・結婚・出産などのプライベートな質問を執拗にする
    「彼氏(彼女)はいるの?」「結婚の予定は?」「子どもはいつ欲しいの?」など、業務と無関係のプライベート領域に踏み込んだ質問。
  • 身体に触れる
    腰や肩に手を回す、頭をなでるなど、相手が不快と感じる身体への接触。
  • 性的な冗談や質問、下ネタを言う
    「夜は派手そうだね」「下着は何色?」など、露骨な性的発言や話題を振る。

上記のような言動は、就活生の立場が弱いのを利用して行われることもあり、本来なら企業はあってはならない行為を自覚しなければいけません。しかし現実として、就活という不安定な立場を背景に、面接官などが不適切な発言をしてくるケースはゼロとはいえないのです。

2.セクハラが与える影響

2-1.精神的ストレス

セクハラを受けると、多くの人は強いショックを受け、自己嫌悪や不安、怒りなどさまざまな感情にさいなまれます。特に就活では「内定が欲しい」「落ちたくない」という気持ちがあるため、「自分が何か悪いことをしたのでは」「これを訴えたら評価が下がるのでは」と悩み、誰にも相談できず一人で抱え込んでしまうこともあります。結果的に精神的なストレスが蓄積し、就活全体に悪影響を及ぼす可能性があります。

2-2.キャリア選択への影響

セクハラを受けた企業や業界に対して強い不信感を抱き、「もうこの業界で働きたくない」と思うようになることもあります。特にIT業界を目指している方にとっては、セクハラという負の要素が業界全体に対するイメージダウンにつながってしまうかもしれません。しかし、企業や組織によって社風や体質はまったく異なります。セクハラを行う人が一部にいるからといって、業界そのものを諦めるのはもったいない場合もあります。自分のキャリアを制限しないよう、冷静に判断できるような対策を考えておきましょう。

3.セクハラを受けたときの対処法

セクハラに遭ったら、どう行動すればよいのでしょうか。以下では、具体的な対処法を紹介します。これらを知っておくだけでも「もしものとき」に迅速かつ適切に動きやすくなるはずです。

3-1.すぐに記録を取る

まず、セクハラが起きた日時・場所・相手の名前や肩書き、どんな発言や行動があったのかなどをできるだけ詳しくメモに残しましょう。録音やスクリーンショットなど、証拠となるものが残せる場合は、それも確保しておくと安心です。後になって詳細を思い出せず、被害を正確に伝えられなくなる可能性があります。証拠があれば、第三者への相談や法的措置を検討するときに有力な材料になります。

3-2.周囲に相談する

セクハラを受けたことを一人で抱えこまず、友人や家族、学校のキャリアセンター、先輩など信用できる人に相談してください。一人で悩んでいると、「自分が悪いのではないか」という思い込みや、企業・業界に対する恐怖感が強まってしまうことがあります。第三者に話すことで気持ちの整理がついたり、客観的な意見をもらえたりすることがあります。

また、学校のキャリアセンター(就職課)などは、学生の就職活動を支援するために設けられた機関です。セクハラの問題にも対応するケースが増えているので、ぜひ活用してみましょう。

3-3.企業に通報・相談する

もし可能であれば、就活でセクハラを受けた企業の人事部やコンプライアンス部門、ハラスメント相談窓口などに連絡し、事実を伝えることも検討しましょう。企業としては、応募者に対するセクハラは「採用ブランドの失墜」にも直結する重大な問題です。
ただし、相談する際は感情的にならず、事実を客観的に伝えることが大切です。前述の記録や証拠を整理し、「いつ・どこで・誰に・どのような形でセクハラをされたのか」をまとめて説明できるようにしておきましょう。企業側が誠実に対応してくれる場合もありますが、そうでない企業も残念ながら存在します。その場合は以下の手段も検討する必要があります。

3-4.外部機関への相談

企業が対応してくれない、または相談しづらい場合は、公的な相談窓口や労働組合、弁護士などに相談する方法もあります。たとえば各都道府県に設置されている**「総合労働相談コーナー」**では、無料で労働に関するさまざまなトラブルについて相談が可能です。就活生であっても利用できるケースがありますので、困ったときはまず情報を集めてみましょう。
また、労働局の雇用環境・均等部門(旧称:雇用均等室)では、セクハラに関する相談や解決のためのあっせんなどを行っています。相談内容によっては、法的措置のアドバイスを受けることもできます。

3-5.就活を中断・辞退するという選択肢も

セクハラがあまりにも深刻な場合や、企業の対応が不誠実な場合などは、その企業への就職をあきらめるという選択肢もあります。就活生にとっては「内定が欲しい」「不採用になりたくない」という思いがあるかもしれませんが、セクハラを見過ごす企業で働き続けるのは自分の心身に大きな負担となる可能性があります。自分の尊厳を守り、より良い環境で働くためにも、自ら行動を起こすことは大切です。

4.セクハラを避けるための自己防衛策

4-1.質問への対応策を考えておく

面接で「恋人はいるの?」「結婚はいつするの?」といった明らかに業務とは無関係の質問を受けた場合、就活生は返答に困ってしまいます。しかし、これらの質問はそもそも違法性を帯びる可能性が高く、答える義務はありません。とはいえ、正面から「それはセクハラです」と反論するのが難しい場合もあります。
そんなときには、「業務に直接関係のない部分につきましては、今は特に考えておりません」や「現時点でお話しできることはありませんが、御社の業務には興味を持っています」など、角の立たない言い方でかわす方法があります。就活前に、こうした想定問答を準備しておくことで、突然のプライベート質問に慌てずに対応できます。

4-2.複数人での面接・懇親会を希望する

企業によっては、個別面接や小規模な懇親会など、少人数での面接や交流を提案されることがあります。一対一の場面ではセクハラのリスクも高くなるため、できれば複数人での対応を希望するのも一つの方法です。企業からの要望によっては難しい場合もありますが、事前に「他の学生さんも一緒に参加してよろしいですか?」「個別面談よりもグループセッションのほうがありがたいです」といった形でリクエストしてみることも検討しましょう。

4-3.自分の身を守る意思表示をする

相手の言動に不快感を覚えたら、なるべく早い段階で「やめてほしい」という意思表示をしましょう。明確に拒否の言葉を伝えることが難しい場合でも、嫌悪感を示す表情や態度を取るだけでも効果はあります。面接官は「就活生は断りにくい」という思い込みを持っているケースもありますが、はっきりとした拒否反応に出会うと、思わず行動を控えることも少なくありません。
もちろん、面接という立場で強く言いづらい場合は無理をする必要はありませんが、自分の身体的・精神的安全を守るうえで「私は不快に感じています」というメッセージを伝えることは、決して悪いことではないのです。

5.セクハラをする企業を見極めるポイント

セクハラの加害者は、残念ながら一部の経営者や面接官、担当者である場合があります。完全に予防するのは難しいですが、就活段階である程度企業のハラスメントへの取り組みや雰囲気を見極めることは可能です。

  1. 会社の口コミサイトやSNSで情報収集
    社員や元社員、他の就活生が企業の口コミサイトやSNS上で「ハラスメントがあった」「面接官の態度がひどかった」といった内容を投稿している場合があります。必ずしも全てが真実とは限りませんが、複数の書き込みが見られる場合は注意が必要です。
  2. 説明会や面接での対応
    説明会や面接で、担当者がやたらとプライベートな話題を持ち出してこないか、他の就活生の容姿や性別に言及していないかなど、相手の言動を観察してみましょう。セクハラに限らず、態度や言葉遣いが乱暴だったり、高圧的な雰囲気がある企業は、労働環境にも不安を抱えがちです。
  3. ハラスメント防止策の有無
    企業のホームページや募集要項などで、ハラスメント防止研修の実施や相談窓口の設置などを明確に打ち出しているところは、比較的取り組みに力を入れている可能性が高いです。もし情報開示が少なく疑問を感じる場合は、面接で直接「ハラスメント防止策や社内相談窓口はあるのでしょうか?」と確認してみても良いでしょう。

6.もし心や身体に深刻なダメージを負ったら

セクハラを受けて深刻なストレスやトラウマを抱えてしまった場合、無理をせず専門家の助けを借りることも検討しましょう。心療内科やカウンセリングを利用することで、気持ちを整理し、回復に向けて一歩を踏み出すことができます。また、就活を一時的に休止して、心身の回復を優先することも決して悪い選択ではありません。
自分の健康を守ることは、自分らしいキャリアを築くための土台でもあります。特に文系・未経験でIT業界を目指す方は、新しい技術や知識を吸収するためにも、心身ともに良好な状態で臨むことが重要です。長期的な視点で就活を捉え、必要に応じて休息をとる勇気を持ちましょう。

7.まとめ

就職活動中にセクハラを受けるというのは、本来あってはならないことです。しかし、残念ながら現実問題としてゼロではなく、就活生の弱い立場を悪用して不当な言動をする面接官や担当者が存在します。もしセクハラを受けた場合は、その場で対抗するかどうかにかかわらず、まずは事実をメモに残すなど証拠を残すこと、そして家族や友人、キャリアセンター、外部の公的機関や弁護士などに相談することが大切です。

企業側が誠実に対応してくれる場合もあれば、そうでない場合もあるでしょう。もしも企業の対応に納得がいかない場合は、就活の辞退や法的措置、外部機関への相談などを検討する必要があります。自分の尊厳を守ることは、将来のキャリアにおいてもとても重要です。

就活生は「雇用される側」という弱い立場にいると感じてしまいがちですが、企業に採用されることがゴールではなく、自分に合った環境で安心して長く働けることが大切です。セクハラをしてくるような企業でキャリアをスタートさせるよりも、より健全な労働環境を提供してくれる企業を選ぶ方が、最終的には自分の成長や満足感につながります。

また、文系・未経験からIT業界を目指す場合、初めてのことが多く不安になりがちですが、ハラスメントの被害に遭わないようにある程度の自己防衛策や知識を身につけておけば、よりスムーズに就活を進められるでしょう。セクハラを恐れるあまりに業界全体を諦めるのではなく、「セクハラをする一部の企業に引っかからないように賢く見極める」という姿勢で、前向きにキャリア選択をしていくことが大切です。

最後に、本記事で紹介した内容はあくまでも一般的な知識や情報に基づいたものであり、法的なアドバイスを行うものではありません。実際にセクハラ被害に遭い、深刻な状況になった場合は、弁護士や労働局などの専門家や公的機関に相談して、適切な解決策を一緒に考えてもらいましょう。自分一人で全てを抱え込む必要はありません。困ったときは勇気を持って周囲に助けを求め、安心して働ける環境を見つけてくださいね。

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