本記事は、文系・未経験からIT業界、特にSIer(システムインテグレーター)の営業職を志望している就活生に向けて、営業やコミュニケーションに関する実践的ノウハウが詰まった一冊として「成果に直結する『仮説提案営業』実践講座」(著者:城野 えん、出版社:日本実業出版社、2022年8月29日頃刊)をご紹介するものです。
SIerでの営業は、ただ商品やサービスを売るだけではなく、顧客企業の課題を探り当て、その課題解決のためにITシステムやサービスを組み合わせて提案する——いわゆる“コンサルティング営業”の色合いが強い仕事です。本書で解説される「仮説提案営業」の考え方は、このようなSIer営業の現場で大きく役立ちます。
本記事では、本書の概要とSIer営業志望の就活生に向けた活用法を解説していきます。
1. 書籍の概要
1.1 タイトル
『成果に直結する「仮説提案営業」実践講座』
1.2 著者・出版社
- 著者:城野 えん
- 出版社:日本実業出版社
- 発売日:2022年8月29日頃
著者の城野 えん氏は、多くの企業や業界に対して営業コンサルティングや研修を行ってきた実績豊富なコンサルタントです。SIerでの営業経験者ではありませんが、IT業界を含むさまざまなビジネスの現場をサポートしてきた“提案営業”の専門家。営業や提案における本質的なポイントをわかりやすく伝える能力に定評があります。
1.3 本書が取り扱う主な内容
本書では、“仮説提案営業”を成功させるためのプロセスが、大きく4つのステップでまとめられています。
- 仮説の立案
相手(顧客)の潜在的な課題を想定し、それが真の課題なのかを見極めるための思考プロセス。営業では「どんな問題を抱えているのか」をヒアリングだけでなく、こちらから仮説を提示しつつ相手のニーズを深堀りすることが大切だと説きます。 - 情報収集と検証
立てた仮説を裏付ける情報を収集し、それが合っているかどうかを検証する方法。SIer営業においては、導入実績や技術的なデータが相手の判断材料になるため、このステップが欠かせません。 - 提案の組み立て
顧客のニーズに対して「どういうアプローチをとるのか」「どんなシステム構成が最適か」を論理的に構築し、相手が理解しやすい形で伝える技術が解説されています。 - フォローアップ
提案したシステムが採用された後、運用が開始した後のサポートや追加提案など、長期的な顧客満足度を高めるためのノウハウが豊富に盛り込まれています。
1.4 本書の特徴
- 現場のリアルな事例に基づく解説
著者がコンサルタントとして遭遇した成功例・失敗例が具体的に示されるため、抽象的な理論に終わらず、実際の営業現場でどういうシチュエーションが起こり得るかが理解しやすい構成です。 - 論理的思考と心理的アプローチのバランス
数字やデータを使ったロジカルな提案だけでなく、「相手の本音をどう引き出すか」「どこに共感してもらうか」という心理的アプローチも重視している点が特徴的です。ITシステムの導入は投資額が大きいため、顧客が不安や疑問を抱えがちですが、そうした心理面への配慮を学べます。 - シンプルかつ実践的なステップ指向
「1. 仮説立案 → 2. 情報収集 → 3. 提案 → 4. フォローアップ」というシンプルな流れで解説されるため、未経験でも頭に入りやすく、「何をすればいいのか」が明確になりやすい点が魅力です。 - 提案書の作り方やコミュニケーションのヒントが満載
提案書を作成するうえで重要なポイントや、プレゼンテーション時の注意点など、就活生が「実際に営業の仕事をするイメージ」をつかみやすい具体例が示されています。
2. おすすめポイント
ここでは、本書の中からSIer営業を志望する就活生にとって特に役立つと思われる4つのポイントを挙げます。
2.1 顧客のIT課題に“仮説”をもって挑む姿勢が身につく
SIerの営業は、“顧客が抱える業務上の課題をITソリューションでどう解決するか”を考えることがメインタスクです。しかし、顧客自身も自社の課題を正確に把握できていないケースが少なくありません。本書で解説される「仮説提案営業」では、こちらから先回りして「もしかすると〇〇の領域で問題を抱えていませんか?」と提案する手法を学べるため、将来の営業活動で大いに活かせます。
2.2 論理的思考とコミュニケーション術が同時に身につく
IT業界、特にSIerの営業では、技術的な仕様説明だけでなく「なぜその技術やシステムが相手の問題解決につながるのか」というロジックを明確に伝える必要があります。本書で学ぶロジカルシンキングのエッセンスは、文系・未経験の就活生にとって心強い武器になるはずです。また、数字や根拠だけでなく、心理的アプローチや共感の引き出し方など、コミュニケーションの“柔らかい部分”も習得できる点が魅力的です。
2.3 システム導入後のフォローアップの重要性を理解できる
SIerが提供するシステムやサービスは、導入後が本番です。運用開始後にエラーが起きないようにするための確認作業や、顧客が使い方に困ったときのサポートなど、継続的な顧客満足度の維持が成約後のキーとなります。本書では、“提案後のフォローアップ”を「成果を出す営業プロセスの一部」として位置付けているため、SIer営業の本質をしっかり理解するうえで最適な内容といえます。
2.4 “成果直結型”の行動指針が具体的に示されている
一般的な営業ノウハウ本では、テクニック論やコミュニケーションスキルが中心になりがちですが、本書はあくまでも「顧客の成果や満足度を高める」ことをゴールに据えています。これはそのままSIerの営業にも当てはまります。提案内容が的確であれば顧客の業績向上につながり、継続的なプロジェクト受注にもつながるため、就職後に“数字”で評価される場面でも本書の考え方は大いに役立ちます。
3. SIerの営業を志望している就活生への活かし方
次に、本書で紹介される“仮説提案営業”のノウハウを、どのように就活や入社後に活かせるかを4つの観点から解説します。
3.1 企業研究をもとに「御社への提案」を想定してみる
SIerの営業職の選考では、よく「当社の強みは何だと思いますか?」あるいは「入社後、どんな営業がしたいですか?」と問われます。本書で学んだ仮説提案のプロセスを使えば、企業研究から得た情報をもとに「〇〇事業を伸ばそうとしている御社では、△△の分野で新しいソリューション提案が求められるのでは?」といった切り口の自己PRができるようになります。就活生の段階から“提案”という視点を備えていることは、面接官にも好印象を与えるはずです。
3.2 グループディスカッションやケーススタディでの強みとして発揮する
SIerなどIT企業の選考では、グループディスカッションやケーススタディ形式の面接が行われる場合があります。与えられたテーマに対して仮説を立て、情報を整理し、チームとしてどんな解決策を提案するのかを問われる場面で、本書で学んだ思考プロセスを活かすと効果的です。「まず仮説を立ててみる」というステップを意識できると、発言に筋道が通り、グループをリードできる存在感が生まれます。
3.3 「顧客志向」の姿勢を面接で具体的に示せる
「顧客志向」はSIer営業で欠かせない要素ですが、単に「顧客のことを考えます」と言うだけでは説得力に欠けます。本書を活用して“顧客の潜在課題を仮説ベースで導き出し、当社のソリューションで解決するイメージを描く”という提案型の営業姿勢を示すことで、面接官に「この人ならプロジェクトの上流工程から顧客に寄り添ったシステム提案ができそうだ」という期待感を持ってもらいやすくなります。
3.4 入社後、先輩のサポートを受けながら“提案の型”を実践できる
無事に内定を獲得し、SIerに営業として入社した後も、本書で身につけた仮説提案のプロセスはすぐに活かせます。最初は先輩社員が商談に同席してくれるケースが多いですが、「顧客企業の業界トレンドや課題は何か?」「その課題にどう対処するのか?」という考え方を常に頭に置いておけば、短期間で成果を出せる人材へと成長しやすくなります。まさに“仮説提案営業”の型を実務で試し、修正し、精度を上げていく——このサイクルが営業としてのスキルアップに直結するのです。
4. まとめ
SIerの営業を志望している就活生にとって、技術的な知識やプログラミングスキルだけではなく、顧客の課題を見極めて解決策を提案する力が非常に重要です。本書『成果に直結する「仮説提案営業」実践講座』は、そうした提案型の営業力を初心者でもわかりやすく身につけられる構成になっており、下記のようなメリットが期待できます。
- 仮説思考を身につけ、顧客の隠れたニーズを先回りして提案できる視点が得られる
- ロジカルシンキングや心理的アプローチのバランスを学び、説得力ある営業スタイルを確立できる
- 提案から導入後のフォローアップまでを一貫して学べるため、SIer営業の本質を理解できる
- 就活段階から企業研究や面接で“仮説提案”の手法を実践し、面接官に好印象を与えられる
SIerの営業は、単なる物売りではなく、ITソリューションを通じて顧客企業の経営課題を解決するという、非常にやりがいのある職種です。その分、専門知識や戦略的な営業スキルが求められますが、本書の「仮説提案営業」を手掛かりにすれば、未経験者でも段階的にステップアップできるはずです。
本書を通じて理論と実践を学ぶことで、自分の中にあるビジネスパーソンとしての潜在力を引き出してみてください。SIerの営業を目指す皆さんが、仮説提案営業を武器に、就活や今後のキャリアで大きく飛躍されることを心より応援しています。