【書評】営業1年目の教科書

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本記事は、SIer(システムインテグレーター)の営業職を志望している方に向けて、『営業1年目の教科書』をどのように活用できるかを紹介する書評記事です。

SIerの営業と聞くと、技術力や専門知識が必要なイメージがあるかもしれませんが、お客さまとの信頼関係を築き、課題をヒアリングし、最適なソリューションを提案する力は、どの業界においても営業の本質。文系・未経験の方でも“営業力”さえ身につければ、SIerの営業というキャリアを十分に切り開くことが可能です。

本書『営業1年目の教科書』は、そのエッセンスを初心者向けにわかりやすくまとめた一冊。新卒・未経験でSIerの営業を目指す方にとっても、「顧客との関係構築」や「失敗との向き合い方」「成果を出す仕組みづくり」といった実践的な考え方が学べるはずです。ではさっそく、書籍の概要から見ていきましょう。

1. 書籍の概要

1.1 タイトル

  • 『営業1年目の教科書』

1.2 著者・出版社

  • 著者:菊原 智明
  • 出版社:大和書房
  • 出版年月:2018年2月22日

著者の菊原智明氏は、不動産営業で実績を残した後、多くの企業や営業パーソンを支援するコンサルタントとして活躍してきました。豊富な営業経験をもとに、成果を上げるポイントや行動の仕組みづくり、モチベーション管理などを体系的に解説しています。

1.3 本書が取り扱う主な内容

本書では「営業1年目がつまずくポイント」に注目しながら、以下のようなテーマを軸にして解説が進みます。

  • 営業の基本的なマインドセット
  • 新人がぶつかりやすい不安や悩みへの対処法
  • お客さまとのコミュニケーション術や信頼関係の築き方
  • 具体的な行動計画やモチベーション管理方法
  • 長期的に営業成果を伸ばすための仕組みづくり

飛び込み営業やテレアポなどの具体的なシーンで、どのように行動し、どこを意識すればよいかが事例とともに紹介されています。SIer営業においても、新規顧客を開拓するフェーズや既存顧客の深耕営業にあたって必要な考え方が散りばめられています。

1.4 本書の特徴

  1. 体系立ててまとまっている
    営業に関する知識やノウハウは散在しがちですが、本書は新人が最初に押さえるべき項目をシンプルに整理してくれています。章ごとにテーマが明確なので、「どこから手を付ければいいかわからない」という営業初心者でもスムーズに読み進められるはずです。
  2. 著者の体験談が豊富でわかりやすい
    「不動産営業」という厳しい環境で実績を上げた著者のエピソードを通じて、“なぜその行動が成果に結びついたか”“失敗からどのように学んだか”がイメージしやすくなっています。SIerの営業とは業種が異なる部分もありますが、「お客さまとの対話や信頼構築の本質」は共通しているため、すぐに応用できるでしょう。
  3. モチベーションやメンタルのマネジメントが重視されている
    営業は断られることや失敗がつきもので、特に新人のうちは心が折れやすいもの。本書では、挫折をうまく乗り越えながら行動を継続するための自己管理術がたくさん紹介されています。新人時代には「まず行動量を確保すること」が求められますが、そこで悩みを抱えないようなメンタル面のアドバイスはSIer営業にも十分活かせるでしょう。
  4. 実践に移せるステップが提示されている
    単なる読み物で終わるのではなく、読んだその日から実践できる具体的な行動プランが提示されています。SIer営業で言えば、「顧客の課題をどうヒアリングしてどう提案につなげるか」「案件を獲得した後のフォローをどう仕組み化するか」を構造的に捉えるヒントが詰まっています。

2. おすすめポイント

2.1 新人が抱える不安をやわらげるメンタルケアのヒント

初めて営業の世界に飛び込むとき、不安はつきものです。「知識が足りないのではないか」「失敗したらどうしよう」といった漠然とした恐れがあるでしょう。しかし、本書には「最初から完璧を求めなくてもいい」というスタンスが根底にあるため、新人営業が抱えがちなメンタルの負担を軽くしてくれます。SIer営業ならではの「技術的な話題についていけるか不安」という悩みも、「相手にしっかり質問しながら理解を深める」姿勢でカバーできる、というマインドセットを得られるはずです。

2.2 お客さまとの関係づくりの基本が具体的

SIer営業の場合、長期的にクライアントと付き合うケースも多く、「いきなり導入して終わり」ではなく、その後の運用や追加要件にも対応していく必要があります。本書では「一度契約して終わり」ではなく、「信頼を重ねることでリピートや継続的な関係を築く」という視点が強調されており、営業として大切な“顧客との関係を育むプロセス”を具体的に学べます。

  • 相手の課題や要望を丁寧に聞き出す
  • 約束を守る、期日を守る
  • 継続的にコミュニケーションを取り、追加ニーズの発掘につなげる

こうした一連のステップは、SIer営業においても欠かせないポイントです。

2.3 失敗から学び、次に活かす習慣づくり

営業初心者が壁にぶつかったとき、失敗を避けるために行動を減らしてしまったり、モチベーションを大きく損ねてしまうことがあります。本書では、失敗を“学び”と捉える考え方が何度も登場し、「いかに早くトライ&エラーを回せるか」が重要だと説いています。SIer営業でも、提案書作成や見積もりの精度、社内外の連携において、失敗と改善を繰り返すことが求められます。新卒・未経験のうちは、特に細かな改善点を積み上げることで、次の成功確率を上げていく必要があります。本書を読むと、「なぜ失敗したのかを振り返り、すぐに行動を変えよう」という意識が自然と身につくでしょう。

2.4 続けられる仕組み化と自己管理の方法

営業で成果を出すためには、単発ではなく長いスパンで行動を続ける必要があります。本書では、1日の行動計画や週単位の振り返り、月単位の目標設定など、具体的な仕組みづくりのコツが紹介されています。SIer営業でも、

  • 商談リストや顧客対応履歴の管理
  • プロジェクト進捗と提案活動の両立
  • 技術部門との連携スケジュールの調整

など、マルチタスクをこなす力が必要です。こうしたマルチタスクを整理し、モチベーションを保ちながら「やるべきことを着実にこなす」ための仕組み化ノウハウを、本書から学べるのは大きなメリットと言えます。

3. SIer営業志望の方が本書を活かす方法

ここからは、文系・未経験の方がSIer営業を目指す際、本書の内容をどのように取り入れられるかを具体的に考えてみましょう。

3.1 お客さまの「課題」を探るヒアリング力の養成

SIer営業は、とにかく「顧客が抱える課題や要望」を正確に把握するところから始まります。本書では「お客さまの言葉に耳を傾け、本当のニーズを見極める」ためのヒアリングの重要性を説いています。新人のうちは技術知識が不足していても、ヒアリング力さえあれば必要な情報を得ることが可能です。「相手が理解している前提をまず取り払う」「素直にわからないところは質問する」というスタンスを、本書のアドバイスに沿って身につければ、着実に営業としての力が伸ばせるはずです。

3.2 「断られる前提」で行動量を確保する

SIer営業といえども、すべての提案が通るわけではありません。また、導入フェーズに至らないことも珍しくありません。本書にあるように「断られるのは当たり前。むしろ“断られる中から成功を見つける”くらいでちょうどいい」というマインドを持てば、行動量を落とさずに済みます。新人時代は圧倒的な行動量と改善サイクルで成果を積み上げていくのが基本。断られた理由を分析し、「ならば次はこう提案してみよう」と切り替えるスピードが上がれば、やがて大きな商談のチャンスもつかみやすくなるでしょう。

3.3 社内外との連携を「信頼」ベースで築く

SIer営業はクライアントだけでなく、社内のエンジニアやプロジェクトマネージャーなど、多くのステークホルダーとの連携が必要です。その際、「この人になら相談しても大丈夫」と思ってもらえる信頼関係を築くことが重要になります。本書で繰り返し強調される「小さな約束でも確実に守る」「コミュニケーションを怠らない」という基本姿勢は、SIer営業の社内外調整でも大いに役立ちます。エンジニアから信頼される営業は、クライアントへの提案の際にもサポートを得やすく、結果的に成果につながりやすいのです。

3.4 自己管理を徹底し、最新のITトレンドをキャッチアップ

本書で紹介される自己管理のノウハウは、スケジュール管理だけでなく、学習習慣づくりにも応用できます。SIer営業はビジネススキルだけでなく、ITトレンドや技術知識を常にアップデートする必要があります。業界動向や新しいクラウドサービス、セキュリティなど、学ぶことが多いからこそ、「日々勉強する時間を確保し、振り返り、改善する」というサイクルが重要。本書で提案される仕組みづくりを取り入れれば、習慣化が苦手な方でも継続的なスキルアップが見込めるでしょう。

4. まとめ

『営業1年目の教科書』は、その名の通り新卒・未経験の営業パーソンが最初に読んでおくと心強い一冊です。営業が取り扱う商材や業界が異なっても、お客さまとの信頼関係づくり失敗から学ぶ姿勢など、営業の本質は変わりません。

SIer営業には、IT業界特有の知識が必要になる分、最初は戸惑うこともあるでしょう。しかし、技術力や理系出身かどうか以上に「クライアントの課題を丁寧に引き出し、その解決策を提案・実行し続ける姿勢」が重要視されます。本書を通じて営業の基礎をしっかりと身につけ、「ヒアリングのコツ」「行動の仕組みづくり」「断られてもめげずに継続するメンタル」を自分のものにすれば、文系・未経験からでもSIer営業で活躍するチャンスは大いにあります。技術的な知識は入社後や勉強会を通じて身につけることができますから、まずは本書を通じて営業職としての土台を築いてみてください。

未経験だからこそ柔軟性があり、「自分なりのスタイル」を確立する余地があります。『営業1年目の教科書』を活用して、自分の強みを伸ばしつつ、SIer営業の世界で大きな結果を出すための第一歩を踏み出してみてください。きっと、この書があなたの「営業」という仕事への不安や迷いを解消し、成功への道しるべとなることでしょう。

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