【書評】日立の壁

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本記事は「文系・未経験からIT業界への就活」を目指す方々に向けて、東原 敏昭氏の著書『日立の壁』を紹介・書評したものです。特に、本書の内容を「日立製作所を目指す学生」にも活かせるようなポイントを盛り込みながら、就活に役立つ視点を解説しています。

IT業界といえば、近年はスタートアップや外資系IT企業に注目が集まりがちですが、大手総合電機メーカーの日立が挑んできた組織改革とDX(デジタルトランスフォーメーション)の歩みを知ることは、就活において強い武器になるはずです。ぜひ参考にしてみてください。

1. 書籍の概要

1.1 タイトル

『日立の壁』

1.2 著者・出版社

  • 著者:東原 敏昭(ひがしはら としあき)
  • 出版社:東洋経済新報社
  • 出版年月:2023年3月24日

本書の著者である東原 敏昭氏は、2014年から2021年まで日立製作所の社長兼CEOを務め、現在は相談役(または会長)として同社を支えてきた人物です。日立製作所という歴史ある巨大企業を率いながら、組織に深く根付いた慣習や風土、いわゆる「日立の壁」に挑み、大胆な改革を推し進めてきました。その経験と知見が詰まった本書は、単なる経営論にとどまらず、伝統企業の組織体質や文化を変えていく生々しいプロセスが描かれています。

1.3 本書が取り扱う主な内容

  1. 大企業に根づく「壁」とは何か
    歴史が長い企業ほど、そこには長年培われたカルチャーや仕組みがあります。日立の“縦割り組織”や事業部ごとの慣習など、“壁”と表現される問題をどのように認識し、解決してきたのかが本書で語られます。
  2. 国内からグローバルへの転換過程
    もともとは日本市場を主戦場にしていた日立ですが、海外企業の買収や海外拠点の強化をはじめとするグローバル戦略に大きく舵を切っています。本書では、その際に生じた文化的ギャップや組織変革の苦労が赤裸々に紹介されています。
  3. DXと事業の再定義
    近年、ハードウェア主体の企業からITソリューション企業へと変革を加速させる日立。著者の東原氏がどのような視点で「デジタル」を組み込んでいったのか、そしてDX推進のためのリーダーシップや社員教育、組織改革などが具体的に描かれています。

1.4 本書の特徴

  1. トップの視点から語られる改革のリアリティ
    実際に日立を率いてきた東原氏ならではの視点で、「現場と経営トップの温度差」「社内カンパニー制・子会社統合などを巡る決断」「海外事業における合併・買収のジレンマ」などが詳しく語られます。
  2. 成功事例だけでなく苦戦のエピソードも多数
    経営書によくある「成功体験の羅列」ではなく、うまくいかなかった試みや組織内での軋轢、海外事業での苦戦などが臨場感をもって記されています。
  3. 日本企業が抱える普遍的課題への示唆
    縦割り・年功序列・意思決定の遅さ――これらは、日立だけでなく日本企業全体が抱える課題でもあります。本書を読むことで、日本企業の課題構造を理解しつつ、それにどう立ち向かうかというヒントを得られます。
  4. DX時代に必要な企業改革のヒント
    日立がソリューションビジネスに舵を切るプロセスには、他の業界でも応用できる学びがあります。ハードウェア依存からITサービスへと変化する際の組織作りや人材育成のポイントなどは必見です。

2. おすすめポイント

2.1 大企業の変革プロセスを“当事者目線”で追体験できる

巨大企業である日立が変わっていくさまを、組織の頂点に立った著者が語るからこそ、表面的な成功談だけではなく、リアルな葛藤やジレンマが描かれています。大企業ならではの官僚的体質や縦割り構造、国内・海外子会社の数々をどう束ねていくのか――その全体像を知ることができるのは非常に貴重です。

2.2 日本企業とグローバルビジネスの相克を学べる

日立という名だたる日本企業が海外へ進出し、買収やジョイントベンチャーを行っていくなかでぶつかった“国際的な壁”。そもそもの文化の違いからくるトラブルや交渉の難しさが丁寧に描かれています。IT業界においても、日系企業がグローバルで戦うことは珍しくありません。本書は、国際ビジネスのリアルを学びたい方にもぴったりです。

2.3 DX時代のリーダーシップと組織運営がわかる

単に「テクノロジーを導入する」だけではなく、企業全体の仕組みをどう変え、人材をどう活かし、組織をどう動かすのか――ここがDX成功の鍵になります。本書は、長らく製造業を主軸としてきた日立が、デジタル時代にどのように事業領域を拡げていったのかを解説しています。最新技術を扱うIT業界でも、事業変革の際の組織マネジメントは共通する学びが多いはずです。

2.4 企業文化を変えるコミュニケーションやマインドセットのヒント

「変わりたいけれど、変われない」――多くの日本企業が抱えるジレンマです。本書は、その壁を乗り越えるためにトップがどのようにビジョンを示し、現場を説得し、社内外のステークホルダーを巻き込んだのかを具体例とともに紹介しています。これはビジネスパーソンだけでなく、就職活動で企業カルチャーを理解しようとする学生や、新たな環境でリーダーシップを発揮しようとする人にとっても大きな示唆になるでしょう。

3. 文系・未経験からのIT就活への活かし方

ここからは、本書で得た知識をどのように就職活動やキャリア形成に活かせるかについて、4つの視点を示します。特に「日立製作所を目指す学生」にも応用できる内容を織り交ぜていますので、ぜひ参考にしてください。

3.1 大企業の構造を理解し、組織全体を俯瞰する視点を養う

文系・未経験の方こそ、大企業の全体像を理解することが武器になります。 大企業には事業部門やグループ会社など、複雑な構造が存在します。本書を読めば、「大企業の組織がどのように機能し、またどのような壁が生じやすいのか」を具体的にイメージできます。

  • 日立製作所を目指す学生の場合
    日立は数多くのカンパニーやグループ企業を抱え、製造業からITソリューション、社会インフラ、エネルギーと事業領域が幅広いです。面接や志望動機を練る際にも、こうした組織構造を理解し、自分がどの部門やプロジェクトに貢献できるかを具体的に話せるとアピールにつながるでしょう。

3.2 グローバル思考とローカル思考の両立を意識する

本書で描かれる日立の改革プロセスは、海外企業との買収交渉や事業統合など、国際的な舞台でのエピソードが豊富です。グローバルビジネスに取り組むうえで、どのような考え方やリーダーシップが必要かが学べます。

  • 日立製作所を目指す学生の場合
    日立は海外のM&Aや海外拠点の強化を通じて成長を続けてきました。就活時に海外プロジェクトや海外研修制度などに興味がある場合、「本書を読んで得たグローバル視点」を交えた質問や意欲を伝えると、「日立の未来」を共に創りたいと思っている姿勢がアピールできるはずです。

3.3 DX推進のリアルを知り、IT領域での活躍イメージを持つ

文系・未経験でもIT業界へ飛び込むことは十分可能ですが、DXが企業変革にどう結びついているのかを理解しておくと、就活での説得力が増します。本書に描かれる日立の事例は、ハードウェア企業からITソリューション企業へとシフトする具体的な試行錯誤が詰まっています。

  • 日立製作所を目指す学生の場合
    日立は「ルマーダ(Lumada)」と呼ばれるDXプラットフォームを軸に、データ解析やAIなどの先端技術を活かしたソリューションビジネスを展開中です。本書を手がかりに、DXの重要性や成功要因を理解しておけば、「なぜ自分が日立でDXに携わりたいのか」を説得力ある言葉で語れるようになるでしょう。

3.4 組織の「抵抗」を乗り越えるコミュニケーションスキルを学ぶ

企業改革や新規プロジェクトに挑むとき、必ずと言っていいほど現場からの抵抗が起こります。本書では、トップだけではなく現場の社員がどう巻き込まれ、どう抵抗し、どのように合意を形成していったかを知ることができます。これはどの規模の企業でも共通するテーマであり、プロジェクトを進める際の大きなヒントとなるでしょう。

  • 日立製作所を目指す学生の場合
    面接やグループディスカッションなどで「リーダーシップ」や「チームワーク」について問われるとき、本書で学んだ“抵抗を乗り越えるためのマインドセット”を下敷きにして、自分なりのエピソードを語ってみてください。「新しいアイデアをどう広めるか」「上司や他部署との調整をどう行うか」など、組織を動かす視点を持った学生だと評価される可能性が高まります。

4. まとめ

東原 敏昭氏の著書『日立の壁』は、日立製作所の社長兼CEOとして会社の変革を主導した著者が、社内外で直面した“壁”をいかに乗り越えてきたかを語る貴重な一冊です。

  • 大企業の複雑な組織と慣習をどう変えたのか
  • グローバルビジネスへの挑戦で得た学び
  • ハードウェアメーカーからITソリューション企業へ転換するDXのリアル
  • 組織改革で生じる抵抗や葛藤への対処法

これらが、具体的なエピソードとともに紹介されています。本書を読むことで、文系・未経験の就活生であっても「大企業の変革がどう行われるのか」「DXがどう事業に組み込まれていくのか」を理解でき、業界研究の視野を大きく広げることができるでしょう。

さらに、「日立製作所を目指す学生」にとっても、企業理解の深掘りや志望動機の強化、面接やグループディスカッションでアピールできる視点を得るうえで非常に役立つはずです。自分自身を、変革を生み出す側の人材としてどのように成長させたいのかを具体的にイメージできれば、面接官への訴求力も格段にアップするでしょう。

組織改革やDX時代の働き方に興味がある方、日立のような大企業でIT×ビジネスを学びながらキャリアを築きたい方は、ぜひ本書を手に取ってみてください。あなたの就職活動とキャリア形成に、大いに役立つ示唆が得られるに違いありません。

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