【書評】ザ・ラストマン

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本記事では、『ザ・ラストマン』(川村隆、KADOKAWA、2015年3月刊)の概要や特徴、そして本書がどのように文系・未経験からのIT就職活動に役立つかを解説します。

特に、日立製作所の元会長兼社長であった著者の経験が綴られていることから、「日立製作所をはじめとした大手メーカーへの就職」についても視野に入れている方にとって、本書から得られるヒントは非常に大きいでしょう。ぜひ参考にしてください。

1. 書籍の概要

1.1 タイトル

『ザ・ラストマン』

1.2 著者・出版社

著者:川村 隆
日立製作所の元会長兼社長として、同社を立て直す大改革を主導した人物です。川村氏のリーダーシップが「ラストマン」という言葉に象徴されるように、企業の「最後の責任を負う人間」としていかに組織を導いてきたのかが本書には凝縮されています。

出版社:KADOKAWA
2015年3月に刊行され、当時からビジネスパーソンや経営層の間で大きな話題を呼びました。

1.3 本書が取り扱う主な内容

本書が中心的に扱うのは、以下の3点です。

  1. 日立の大規模経営改革の軌跡
    川村氏が社長兼会長として舵を取り、巨額赤字からV字回復までをどのように実現したのか、そのリアルなエピソードが語られます。トップダウン型のリーダーシップだけでなく、周囲を巻き込みながら改革を進めた実例が紹介されるため、組織変革の手法を学ぶうえでも貴重な資料となるでしょう。
  2. 「ラストマン」(最後の責任者)としてのリーダーシップ
    川村氏が「自分がラストマンである」という強い覚悟を持って経営を行ってきた背景や、その哲学がどのように社員に伝わり、組織を動かすパワーとなったかが具体的に語られています。何かをやり遂げるうえで「最後は自分が責任を取る」という立場を明確にすることの意味を考えさせられます。
  3. 日立の組織文化・経営の課題
    100年以上の歴史を持つ日立製作所が、世の中の変化に対してどう対応してきたのか、組織内部の課題や日本の企業体質として一般化しやすい問題を川村氏は率直に指摘しています。この指摘は、他の大企業だけでなく、スタートアップ企業や中堅企業にもあてはまる普遍的な部分が多く、組織が陥りがちな「ぬるま湯体質」や「責任の所在不明」を正面から見つめるうえで、大きな示唆を与えてくれます。

1.4 本書の特徴

  1. 「当事者意識」の大切さを強調
    川村氏が繰り返し強調するのは「自分がラストマンである」という当事者意識です。これは組織のトップに限らず、一社員でも自分の仕事に対して「最後の責任を持つ」心構えを求める考え方でもあります。文系・未経験からIT業界を目指す方にとっても、覚悟を持って仕事に取り組む姿勢は大いに参考になります。
  2. 経営陣と現場社員、それぞれの視点
    トップマネジメントと現場との温度差や、そのギャップをいかに埋めるかについての具体的な手法が本書にはちりばめられています。組織の課題を解決するうえでのコミュニケーションや評価制度づくりのヒントは、業界や職種を問わず応用できる要素が多数あります。
  3. 川村氏自身の挫折や反省が描かれている
    組織改革の美談だけではなく、川村氏自身が経営において直面した失敗や反省、試行錯誤のプロセスも正直に綴られています。大企業のトップだからこその難しさや重圧があり、その克服の道のりから得られる知見は就活生にとっても学びが大きいでしょう。
  4. 平易な文章で読みやすい
    経営に関する専門的な内容が含まれますが、著者の体験談をベースにしているため、比較的わかりやすい語り口です。経営書や企業改革の本は堅苦しい印象が強いかもしれませんが、本書は会話体やエピソードも多く、読み物としても楽しめます。

2. おすすめポイント

2.1 「覚悟」が会社・組織を変える

おすすめポイントの内容
経営トップのリーダーシップと責任感が、いかに社員の意識や会社の方針を大きく変えうるかが鮮明に書かれています。川村氏がリスクを恐れずに踏み込んでいく姿勢、しかし同時に周囲との協調を大切にするバランス感覚は、特に大企業を志望する学生にとっては学び多き内容です。
なぜ役立つか
文系・未経験からIT業界を目指す方にとって、実務スキルと同じくらい大切なのが「自分がこのプロジェクトを成功させるんだ」という覚悟です。本書を読むことで、自分の目標設定や自己管理の仕方を見直すきっかけになります。

2.2 企業文化との「相性」への理解

おすすめポイントの内容
日立という100年以上の歴史を持つ組織の文化を、川村氏は外部から俯瞰するように鋭く指摘しています。企業文化は短期間ではなかなか変わらないものですが、その中でどう自分の考え方を通し、改革を進めていくか。本書には先人たちの苦労や工夫が詰まっています。
なぜ役立つか
就活においては、「自分の性格や価値観と企業が合うかどうか」を見極めることも重要です。大企業かベンチャー企業か、日系か外資系かなど、企業文化をざっと知るうえでの視点が得られます。面接時に「どういう組織文化が自分に合っているか」を説明するためにも、本書から学んだポイントを活かすことができます。

2.3 組織改革の具体的プロセスが学べる

おすすめポイントの内容
赤字体質から短期間でV字回復に導いたその具体的なステップが詳細に描かれています。構造改革だけではなく、給与体系や人事評価制度の再設計、現場感覚の取り入れ方など多岐にわたります。
なぜ役立つか
IT業界でも、企業合併や新規事業立ち上げなど、大きく組織が変わるタイミングに遭遇することは珍しくありません。そうした際に、自分がどのように立ち回ればいいか、改革に巻き込まれる側・主体となる側それぞれの視点を本書で学ぶことができます。

2.4 「マネジメント視点」を身につける

おすすめポイントの内容
文系出身だと、とかく「現場での技術スキル」に劣等感を抱きがちです。しかし、IT業界といえどもプロジェクトの進行にはマネジメント力やコミュニケーション力が重要。本書は経営トップの視点を提供してくれる一方、若手でも意識したい「調整力」「俯瞰力」の磨き方が伝わってきます。
なぜ役立つか
ITプロジェクトは多種多様な専門家が関わります。上手に橋渡しをしたり、合意形成を図る能力はどの企業でも強く求められます。「ラストマン」としての当事者意識をもとに、どう人を巻き込むかという視点は、文系・未経験であっても大きな武器になるはずです。

3. 文系・未経験からのIT就活への活かし方(4つ)

ここからは、文系・未経験からIT業界への就職を考えている方に向けて、本書から得られる学びを具体的に落とし込む方法を4点挙げてみます。また、著者が日立製作所のトップを務めた経験から、日立製作所の選考を受ける際にどう活かせるかというポイントも併せて解説します。

3.1 当事者意識を持って学習・自己研鑽を進める

  • 文系・未経験からのIT就活に活かす
    文系出身の方の中には、「プログラミングを一から学ぶのはハードルが高い」「IT知識がないから選考で不利」といった不安を抱えている方も多いでしょう。しかし、本書が繰り返し示す「ラストマン」の姿勢を自分にも適用してみると、「最終責任者として学ぶ必要があるのだから、少しずつでも技術に触れてみよう」という前向きな行動に変えられます。オンライン教材やプログラミングスクールを活用する際も、「自己投資に責任を持つ」と考えるだけで意欲は大きく変わってくるはずです。
  • 日立製作所の選考に活かす
    日立製作所は昔から技術力やモノづくりのイメージが強い企業ですが、近年ではIT部門(システムインテグレーションやIoTなど)を非常に重視しています。「自分が技術スキルをまだ持っていないから」ではなく、「自分が主体となって技術を習得し、プロジェクトに貢献したい」という当事者意識を強調すると、選考でも好印象を与えられるでしょう。本書で語られる「自分が責任を持つ」というマインドをアピールすると、「未経験者だけどやる気がありそうだ」と判断してもらいやすくなります。

3.2 組織文化を理解したうえでキャリアプランを描く

  • 文系・未経験からのIT就活に活かす
    本書では、日立が抱えていた企業文化上の問題—「大企業病」と呼ばれるような課題—が示唆されています。IT業界にもさまざまな企業文化があり、大手SIer・メーカー系・ベンチャーなど多様です。就活生としては、自分自身がどのような社風・組織体質に合うのかを見極めることが大切です。本書を読み、日立の文化や川村氏が取り組んだ改革の内容に触れることで、組織の強みや弱みを客観的にとらえる視点が養われます。
  • 日立製作所の選考に活かす
    日立を志望する場合、本書で語られる「日立の企業文化」や「改革の歴史」を理解することは大きなアドバンテージになります。「なぜ日立なのか?」という問いに対して、「川村氏による改革で○○が変わり、それが今の企業戦略の原点になっている。そこに共感したから志望した」という形で答えられれば、面接官の印象に残りやすいでしょう。単に企業概要を暗記するのではなく、改革のプロセスや日立が大切にしている価値観を語ることで、「一緒に働きたい人材」として評価される可能性が高まります。

3.3 マネジメントやリーダーシップへの視点を面接でアピールする

  • 文系・未経験からのIT就活に活かす
    プログラマーやシステムエンジニアなどの技術職を目指す場合でも、マネジメントやリーダーシップに関する考え方を持っている人材は貴重です。本書を通じて学んだ「ラストマンの視点」や「責任感・当事者意識」について、具体的なエピソードを交えて面接でアピールしてみましょう。たとえば、大学時代のサークル活動やアルバイトで、どのようにチームをまとめたり、責任を持って行動したかなどを「ラストマン」というキーワードを引用しながら説明すると、印象深いアピールができます。
  • 日立製作所の選考に活かす
    日立製作所にはさまざまな部署があり、組織の縦割りをなくすための試みが進んでいます。こうした背景を踏まえて、「チームワーク」「リーダーシップ」に対する見解をはっきり伝えられれば、面接で強みを示せるでしょう。本書の具体的な事例を踏まえて、「部門間の連携がうまくいかない状況でラストマンとして責任を果たした川村氏のように、自分も周囲を巻き込む努力をしたい」といった意欲を語ると説得力が増します。

3.4 トップダウンとボトムアップの両方の視点を持つ

  • 文系・未経験からのIT就活に活かす
    本書を読むとわかるとおり、川村氏は強いリーダーシップだけでなく、現場の声を丁寧に拾い上げるボトムアップ的な要素も重視していました。IT業界で働く際には、上からの指示にただ従うだけでなく、現場レベルでの課題をどう解決するかを提案していく姿勢が求められます。文系・未経験だからこそ、「現場の状況を理解して改善策を考えられる人材」としての付加価値を発揮できます。
  • 日立製作所の選考に活かす
    大企業である日立でも、部門間の連携や現場と経営陣の対話など、多くのコミュニケーションが必要とされています。志望動機や入社後の展望を語る際に、「トップダウンとボトムアップの両面を意識し、プロジェクトを成功させたい」と言及できれば、「本書を読んで日立の経営手法や組織の在り方をしっかり学んでいる」と評価してもらいやすいです。実際の事例に即して語れるよう、本書のエピソードを自分なりの言葉で整理しておくことをおすすめします。

4. まとめ

川村隆氏の『ザ・ラストマン』は、大企業・日立製作所を舞台にしたリアルな改革の物語でありながら、IT業界を志望する人、特に文系・未経験の就活生にとっても多くの学びを与えてくれる一冊です。

  • 「自分が責任を取る」という当事者意識
  • 企業文化や組織構造を俯瞰する視点
  • 具体的な組織改革の手順やマネジメントの考え方
  • トップダウンとボトムアップの絶妙なバランスの取り方

これらはすべて、IT業界で求められる総合力に直結します。文系・未経験であっても、これらの要素を意識して自己分析や面接対策を行うことで、大きなアピールポイントを得られるはずです。

さらに、日立製作所をはじめとした大手企業の選考を目指すのであれば、本書の具体的なエピソードを知っておくことは面接や筆記試験においても大いに役立ちます。「なぜこの会社で働きたいのか?」という質問に対して、日立の歩んだ歴史や経営改革の苦労、そこから生まれた価値観をもとに自分のキャリアプランを語れるようになれば、他の応募者と差をつけられるでしょう。

IT業界でのキャリアを切り拓くうえでは、技術スキルの習得ももちろん重要です。しかし、自分の役割と責任を自覚し、「ラストマン」として行動することの大切さを本書から学び、就職活動のみならず、その先のキャリアでも活かしてみてください。きっと、周囲から頼られる人材として成長していけるはずです。

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