【書評】挑む力

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本記事では、文系・未経験からIT業界への就職を目指している方に向けて、片瀬京子・田島篤共著『挑む力』(日経BP、2012年7月刊)を解説します。

本書では、困難に立ち向かい、自ら新たな道を切り開いていく「挑戦する姿勢」をどのように身につけ、実践するかが数多くの事例を交えて紹介されています。

文系出身・IT未経験の方が、就活時にアピールできる「挑戦力」とは何か、そして富士通をはじめとするIT企業の選考の中でどのように活かすかを具体的に考察していきましょう。

1. 書籍の概要

1.1 タイトル

『挑む力』

1.2 著者・出版社

  • 著者:片瀬京子、田島篤
  • 出版社:日経BP
  • 刊行年月:2012年7月

1.3 本書が取り扱う主な内容

『挑む力』は、社会の変化や組織の課題、人々の働き方に関する様々なケースを通じて、「挑戦することの本質」や「逆境を乗り越えるための思考・行動様式」を説いている一冊です。具体的には以下のようなトピックが中心となっています。

  • 逆境への向き合い方
    不測の事態や失敗をどのように捉え、次の一手を見出していくか。
  • 挑戦のプロセス
    目標を設定し、リスクをとりながら前に進む際に欠かせない準備・プロセス・マインドセット。
  • 人との協働・コミュニケーション
    チームや周囲の人々を巻き込みながら大きな困難を突破していくリーダーシップやコミュニケーションの要点。
  • 組織における挑戦
    組織特有の制約を乗り越えて成果を上げるために、どのように意思決定を行うか。

1.4 本書の特徴

本書の特徴は、「挑戦すること」が単に勇気やガッツ、根性に左右されるというステレオタイプを覆し、具体的な手法や思考プロセスを詳細に解説している点にあります。企業の経営者やリーダーの視点だけでなく、現場で実際に苦労を重ねた人々のエピソードを豊富に交え、「失敗をどう活かしたか」「挑戦がどのように次のステップを生み出したか」を読みやすい構成でまとめています。文系や未経験の人にとっても、「ITだからこそ必要な専門性とは別に、自分らしい挑戦のスタンスをどう育むか」を考えるきっかけを与えてくれる本です。

2. おすすめポイント

2.1 失敗や逆境に対するポジティブな捉え方を学べる

本書の魅力は「失敗や逆境は、ただ避けるべきネガティブなものではなく、学習や成長への重要な材料となる」というメッセージを、具体的な事例とともに示していることです。挑戦を続ける中では必ずといっていいほど挫折や失敗に直面します。しかし、それを客観的に分析し、次のアクションに活かしていくフローを作り上げることで、新たな目標に到達しやすくなるという考え方がわかりやすく解説されています。

2.2 コミュニケーション能力の鍛え方を体系的に理解できる

挑戦を成功させるうえで不可欠なのは「周囲を巻き込み、協力を得るためのコミュニケーション力」です。本書では、単なる自己主張だけではなく、相手や組織の立場を理解したうえで、どのように合意形成を図るか、その過程で必要となるリーダーシップのエッセンスを説いています。「自分の役割を自覚する」「相手の言葉や態度の背景を読み解く」といった実践的アドバイスが散りばめられているので、文系・未経験の方がIT業界において強みとなる「調整力」や「情報共有スキル」を習得するヒントにもなります。

2.3 自分の軸を見つけ、行動に移すヒントが得られる

挑戦を続けるうえで重要なのは「自分自身が何をしたいのか」「どんな価値を提供できるのか」という軸を持つことです。本書では、挑戦に踏み出す前に自分の意志や強みを見極める方法、周囲の意見との折り合いをどうつけるかなど、内面を見つめるためのヒントが多く示されています。「やりたいこと」「社会に貢献できること」「求められていること」の三要素を重ね合わせて考える手法や、PDCAサイクルを回す際のポイントも具体的に解説されているので、自己分析や企業選びにも応用しやすい内容です。

2.4 組織内での挑戦を成功させる戦略が具体的

「挑戦」はスタートアップや個人事業主だけのものではありません。大企業や官公庁のような大きな組織の中で新しいプロジェクトを推進することも、一つの挑戦です。本書では、組織が持つ制約やしがらみ、利害関係の調整などにどう対処し、「一人ひとりの主体性を引き出しながらチームとして成果を出すか」といった視点が丁寧に語られています。IT企業のように複数の部署・ステークホルダーが関わる現場では、こうした組織横断的な挑戦が求められることも多いため、社会人になってからも活かせる知見が豊富です。

3. 文系・未経験からのIT就活への活かし方

ここからは、『挑む力』をどのようにIT就活へ、特に文系・未経験の方が活かしていくかを具体的に整理します。また、富士通をはじめとするIT大手企業の選考でも活かせる視点を併せて紹介します。

3.1 「失敗を肯定的に捉え、次の行動につなげる」姿勢

  • 文系・未経験からのIT就活に活かす
    文系・未経験でIT業界を目指す人は、「自分には理系の知識が乏しい」「プログラミング経験が浅い」などの不安を抱えがちです。しかし、本書が示すように「失敗から学ぶ姿勢」を強調することで、それらの不安を成長の源泉へ変えられます。たとえば面接で「ITパスポートや基本情報技術者試験などの学習に取り組み、わからない箇所にぶつかった経験があるが、調査とリトライのサイクルを回し続け、理解を深める力を身につけた」などと具体例を交えて自己PRすると、逆境を克服できる人材であることを印象づけられるでしょう。
  • 富士通の選考に活かす
    富士通は先進技術の活用だけでなく、社会インフラにも大きく関わる総合IT企業として、多様な領域のプロジェクトを抱えています。新たな技術分野に挑む姿勢や、未知の課題にも果敢に取り組む力が求められます。面接やエントリーシートでは「挫折や困難に直面した時にどんな行動を取り、どのように乗り越えたか」を具体的に示し、「挑戦し続ける力」をアピールすると、ポジティブな評価につながるはずです。

3.2 「チームを巻き込み、成果を出すためのコミュニケーション力」

  • 文系・未経験からのIT就活に活かす
    IT業界にはプログラミングやエンジニアリングといった技術面のイメージが強いですが、実際のプロジェクトはチームプレーによって成り立っています。文系・未経験の方であっても、サークル活動やアルバイト、ゼミ論文など「チームで何かを達成した経験」を振り返って、コミュニケーションを取りながら成果を生み出したプロセスをエピソードとしてまとめると効果的です。本書にある「相手の期待や立場を理解し、協力を引き出す方法」は、IT就活においても大きな武器になります。
  • 富士通の選考に活かす
    富士通は多岐にわたる業種のクライアントを相手にソリューションを提供するため、エンジニア、営業、コンサルタントなど複数の部門が連携してプロジェクトを進めます。そのため、社内外を問わず円滑にコミュニケーションを図れる人材を求めています。面接では、「実際にどのような方法で情報を共有し、メンバー同士のモチベーションを高めながら活動したか」を具体的に伝えられると、評価が高まるでしょう。

3.3 「自分の軸を明確にし、やりたいことと社会のニーズを結びつける」

  • 文系・未経験からのIT就活に活かす
    文系の強みは、「文章による情報発信」「論理的思考を丁寧に組み立てる」「多方面に興味を持つ」など多岐にわたります。本書では「自分が何を本質的にやりたいのか」を見極める方法が紹介されていますが、それをIT業界に照らし合わせる形で考えると、たとえば「ITを通じて社会課題を解決したい」「新しいコミュニケーション手段を創出したい」といった軸が見えてくるかもしれません。この軸を持ったうえで自分の強みを訴求すると、たとえ未経験でも「挑戦心をもって学んでいく姿勢」が説得力をもって伝わります。
  • 富士通の選考に活かす
    富士通のビジネス領域は、製造業、流通業、金融業、官公庁など多岐にわたります。自分が関心を持つ社会課題や興味分野がどこにマッチするかを考え、「なぜ富士通でそれを実現したいのか」を論理的に説明できると好印象です。たとえば「地域の行政サービスをITで効率化し、市民の生活を便利にしたい」「デジタルトランスフォーメーションによる医療のアップデートに携わりたい」など、明確な動機を持って臨むと、自分の軸がしっかりしていると評価されるでしょう。

3.4 「組織での制約を乗り越え、リーダーシップを発揮する」

  • 文系・未経験からのIT就活に活かす
    組織の中で新しい挑戦を進めるためには、限られたリソースや上下関係、ルールなど様々な制約に対処する必要があります。本書の事例を参考にすると、「自分より経験がある人」「専門知識を持つ人」をどうリスペクトしながら、自分の考えを通していくかが重要になります。就活でも、ゼミやアルバイト、ボランティアなどの中で、自分なりに挑戦したエピソードを「制約を乗り越えて成果を出した流れ」に落とし込み、リーダーシップの発揮をアピールしましょう。
  • 富士通の選考に活かす
    富士通のプロジェクトは、多種多様なステークホルダーや異なるバックグラウンドを持つメンバーのコラボレーションで成り立ちます。そのため、「周囲の専門家を尊重しつつ、リーダーシップを発揮できる人材」が求められます。選考でのエピソードとしては、「自分のほうが立場が下だった場面で、どのように相談や協力を仰ぎ、納期に間に合わせたのか」など、具体的に示すことで、組織内で挑戦する力を持つ人物像を印象づけることが可能です。

4. まとめ

『挑む力』は、失敗や困難を前向きに捉え、次の一歩を踏み出すためのヒントが詰まった一冊です。文系・未経験であっても、IT業界を目指す就活生にとって、「専門知識はこれから学べばいい」という姿勢に加え、「自分の強みや興味をどう活かし、現場の課題を解決していくか」を示すことが大切になります。

本書は、単なる精神論ではなく、コミュニケーションやマネジメントといった具体的な方法論にも触れているため、自己分析や面接対策、企業選びにおいても有用です。富士通のような大手IT企業の選考では、プロジェクト推進力や協働を重視する傾向が強く、「挑戦しながら成長を続ける人材」であるとアピールできれば、大きなプラス要素となるでしょう。

特に、「失敗はネガティブではなく、学びのきっかけ」「周囲を巻き込んでこそ新しい価値が生まれる」という考え方は、ITの急速な進化に柔軟に対応するために欠かせません。『挑む力』を一度読んでおくことで、就活だけでなく、その先のキャリアにおいても役立つ「挑戦のマインドセット」を育てられるはずです。文系・未経験の方ほど、本書の事例が示す「自分らしい挑戦スタイル」を確立しやすい面もありますから、ぜひ就活のヒントとして取り入れてみてください。

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