以下の記事では、『デジタルケイパビリティ DXを成功に導く組織能力』を、文系かつIT業界未経験の方がIT就活や野村総合研究所(以下、NRI)の選考に活かす視点で書評し、まとめています。就活やキャリア形成の一助となるよう、ぜひ参考にしてみてください。
1. 書籍の概要
1.1 タイトル
『デジタルケイパビリティ DXを成功に導く組織能力』
1.2 著者・出版社
- 著者:野村総合研究所
- 出版社:日経BP
- 出版年月:2020年11月20日頃
本書は総合シンクタンク・コンサルティングファームとして国内トップクラスの地位を誇る野村総合研究所(NRI)が執筆に関わっています。NRIはビジネス戦略やIT戦略を中心としたコンサルティングを行っており、数多くの大手企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援してきた実績があります。その知見がふんだんに盛り込まれた内容となっている点が特徴です。
1.3 本書が取り扱う主な内容
本書では、企業がDXを推進する際に必要な組織能力(デジタルケイパビリティ)とは何か、どのように整備・運用すべきかが具体的に述べられています。IT技術だけではなく、組織カルチャーや人材育成、ガバナンス体制、リーダーシップといったソフト面も大きく取り上げられ、総合的なDX推進のあり方が紹介されています。
特に以下のポイントが中心となります。
- 戦略の策定と浸透
DXの狙いを明確化し、組織全体で共有するための手法。 - 組織体制・ガバナンス
DXプロジェクトを推進するための組織形態や権限分配、ガバナンスの在り方。 - 人材育成とマインドセット変革
デジタル人材をどのように育て、既存社員にデジタルマインドを根付かせるか。 - テクノロジー活用・データマネジメント
実際にどのようなテクノロジーを活用し、データを資産化していくか。 - 継続的な改善プロセス
DXを成功させるには単発ではなく、継続的に取り組むためのプロセス確立が重要。
1.4 本書の特徴
本書の最大の特徴は、単なるIT技術の導入方法の解説書ではないという点です。DXには技術的なリソースだけでなく、「人・組織・文化」が不可欠であることを強調しており、具体的な組織改革のステップや成功事例、失敗事例にも言及しています。また、さまざまな業界の動向を分析しているNRIならではの、幅広い視点と実践的なアドバイスが盛り込まれているのも本書の大きな魅力と言えます。
2. おすすめポイント
ここでは、文系・IT未経験者にとって特に役立つと思われる観点で、本書のおすすめポイントを4つご紹介します。
2.1 DXの本質を理解するための「幅広い視点」
本書では、単に「AIを導入しましょう」「RPAで効率化しましょう」といった技術論に終始していません。テクノロジーを活かすために必要な人材像や組織改革のプロセス、経営戦略との連動、データの取り扱いなど、多角的な視点でDXを捉えています。
文系の方にとっても、IT分野への苦手意識を超えて「企業の経営や戦略を理解する」ことの重要性がわかるので、ITを単純な専門技術と思わずに「ビジネスの変革を起こす全体像」を学ぶことができます。
2.2 多くの事例が掲載されており、イメージしやすい
コンサルティングの現場で培ったノウハウをベースに、多くの企業事例が紹介されているのも本書の魅力です。実際にどのような課題に直面し、どのように乗り越えたのかが具体的に示されています。
実践例を読むことで、自分が未経験であっても「こういう課題がIT業界で起きているんだ」「こういうソリューションがあるんだ」とイメージを掴みやすくなるでしょう。特にDX推進のプロセスは複雑になりがちですが、事例を追うことで理解が深まります。
2.3 組織能力(デジタルケイパビリティ)を体系的に学べる
本書は「デジタルケイパビリティ=組織能力」という視点を一貫して扱っています。IT未経験者の方には、技術的な知識習得だけではなく、どのように人や組織を動かして変革を実現するかを知ることが今後のキャリアを考える上でも重要です。
文系の方でも、社会学的・経営学的な視点から組織にアプローチする力を磨くことで、IT業界で活躍する可能性が大きく広がります。本書の体系的なフレームワークはその入り口として最適でしょう。
2.4 コンサル的なアプローチを学べる
NRIはコンサルティングやシンクタンク業務の実績が豊富な企業です。本書には、課題を整理し、原因を特定し、解決策を提示し実行するというコンサルティング手法のエッセンスも数多く織り込まれています。文系の方が「論理的思考力」や「課題解決能力」を身につけたいと考える際にも、本書の流れや事例分析は大きな助けとなるでしょう。
IT技術の背景や専門的な理論を理解することももちろん大切ですが、クライアントの課題解決という観点からITを捉えるコンサルマインドを養うことは、未経験者でも十分に取り組める学習です。
3. 文系・未経験からのIT就活への活かし方
次に、本書の内容を踏まえて、文系・IT未経験の方が就活にどのように活かせるかを4つの観点で紹介します。
3.1 DXの文脈を理解し、企業研究に役立てる
DXは多くの企業にとって関心の高いキーワードです。IT業界だけでなく、あらゆる業界でDX担当部署やプロジェクトが増えています。本書を通じて**「DXとは、IT導入だけではなく、ビジネスモデルや組織の変革を伴う総合的な取り組みである」という理解を得ることができます。
これを踏まえて就活時に企業研究を行えば、「この企業ではどういう目的でDXを進めているのか」「組織改革は進んでいるのか」**といった視点で情報を集められるため、他の志望者に差をつける深い洞察につながります。
3.2 自己PRで「提案型の姿勢」をアピールする
未経験の文系学生でも、「課題を見つけ、解決策を提案する力」は身につけることができます。本書にあるようにDXのプロセスでは、課題を洗い出し、組織の変革・システム導入・人材育成など多方面の施策を検討する必要があります。
自己PRで、「IT技術そのものはまだ勉強中ですが、課題発見と解決策提案に取り組んだ経験があります」という形で自分の強みをDXのプロセスに結びつけると、企業にも好印象を与えやすくなります。
3.3 現場視点と経営視点の両方を意識する
本書では、トップダウンとボトムアップの両面からDXを推進する重要性が説かれています。就活においても、「経営視点(全体最適)と現場視点(部分最適)のバランスを考えられる人材」であることをアピールできると強みになります。
ITは単に技術担当だけが担う分野ではなく、経営戦略とのつながりを意識できる人が重宝される時代です。文系でも、その視点をしっかり持っていることを示せれば、IT業界にアピールする際のポイントになります。
3.4 チームでの成果を語れるネタを準備する
DXプロジェクトは複数部門や外部パートナーが連携して進めることがほとんどです。本書でも組織横断的な連携の大切さが繰り返し述べられています。就活の面接では、チームで取り組んだ経験、多様な意見をまとめるリーダーシップ・ファシリテーション能力といった点を問われることが多いでしょう。
未経験者でも、「プロジェクトを牽引した」「メンバー間の調整に注力した」経験があれば、DXの文脈にも通じる組織改革への強みとしてアピールできます。
4. 野村総合研究所の選考への活かし方
NRIはコンサルティングからシステム構築まで幅広い領域を手がけており、DXをはじめとした大規模プロジェクトを数多く支援しています。本書はNRIの知見が詰まった1冊ですので、NRI志望の方は以下の4点を意識して読むと、選考対策にも役立つでしょう。
4.1 NRIのコンサルティングスタイルを学ぶ
本書には、NRIのコンサルティングスタイルが色濃く表れています。具体的には、**「経営課題を的確に把握する」「クライアントが自走できるような提案を行う」「長期視点で価値を提供する」**などのスタンスです。
選考では「当社のコンサルティングの強みは何だと思いますか?」といった質問が来る可能性があります。その際、本書で得た理解を踏まえ、NRIならではのDX支援の特徴を語ることで、説得力ある回答ができます。
4.2 「全体最適志向」をアピールする
NRIは経営戦略の上流工程から、システム構築や運用の下流工程まで一貫して支援する総合力を強みとしています。そのため、顧客企業全体の最適化を常に念頭に置くことが求められます。本書でも、デジタルケイパビリティを発揮する上で、組織全体を俯瞰して考えることの重要性が繰り返し述べられています。
選考中にも、「部分的な解決ではなく、全社的な変革を意識できるか」という視点で見られるケースが多いです。本書で学んだ全体最適の考え方を自分の言葉で整理し、志望動機や自己PRに反映させるとよいでしょう。
4.3 コラボレーション力・マネジメント力をアピールする
NRIのプロジェクトでは、多様な専門領域のメンバー(戦略コンサルタント、ITコンサルタント、エンジニアなど)が連携して仕事を進めます。本書にもある通り、DXには組織内外の様々なステークホルダーが関わるため、コラボレーションとマネジメント能力が非常に重要です。
面接で「チームでどのように問題解決を進めたか」を問われた際には、本書で学んだ横断的な組織連携の視点を加味しながら、具体的なエピソードを挙げて語るとよいでしょう。
4.4 DXの理解を「具体的な業界例」で示す
NRIは金融、流通、製造、公共など幅広い業界のクライアントを持っています。本書にはいくつかの業界事例が挙げられているので、選考での自己PRや志望動機では、それらの事例を踏まえて「どの業界に興味があるか」「その業界でどんな変革を起こしたいか」を具体的に語ると熱意が伝わりやすいです。
DXはどの業界でも注目のテーマですので、「金融業界のDXに強く興味がある」「製造業のDXに参画したい」など、自分の興味と結びつけて話せると良い印象を与えられます。
5. まとめ
『デジタルケイパビリティ DXを成功に導く組織能力』は、「DX=最新技術を導入するだけではない」という、本質的な組織改革の重要性を丁寧に説いている1冊です。文系・IT未経験の方が読んでも、経営視点や人材マネジメントの観点など、幅広い知識を得られます。
IT業界における就活においては、テクノロジーの知識習得だけに注力するのではなく、ビジネス全体を捉える総合力や、人・組織を動かすマネジメントスキルへの意識を高めることが、今後ますます求められます。本書を通じて、DXプロジェクトに必要な考え方や進め方をイメージし、自分の過去の経験や強みをどのように活かせるかを考えてみましょう。
さらに、野村総合研究所をはじめとするコンサルティングファームやシステムインテグレーターの選考では、課題解決力・全体最適志向・コラボレーション力が常に問われます。本書にはNRIならではの視点が数多く盛り込まれているため、それらを自分の言葉でしっかり咀嚼すれば、他の志願者との差別化にもつながるはずです。
文系・IT未経験だからといって臆することなく、企業のDXを支える広い視野と柔軟な思考を身につけることが大切です。 ぜひ本書を手に取り、DX時代に活躍できるキャリアを目指してみてください。