【書評】信頼とデジタル

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本記事は、文系・IT未経験の方が「信頼とデジタル」(三品 和広/山口 重樹 著、ダイヤモンド社、2020年8月21日刊行)をどのように活かし、IT業界、特にNTTデータへの就職活動においてどのように役立てられるかを中心にまとめた書評です。本書のポイントや特徴、就活への具体的な応用例を交えながら、ご紹介します。

1. 書籍の概要

1.1 タイトル

  • 『信頼とデジタル』

1.2 著者・出版社

  • 著者:三品 和広 (神戸大学大学院経営学研究科 教授)、山口 重樹 (弁護士・技術コンサルタントなど多方面で活躍)
  • 出版社:ダイヤモンド社
  • 刊行日:2020年8月21日

本書は日本企業の経営戦略論やデジタル技術の法的・社会的側面に詳しい2名の著者がタッグを組み、「デジタル化が進む時代における“信頼”の本質とは何か」を掘り下げた1冊です。ビジネスや企業経営に限らず、社会全体で大きなインパクトをもたらすデジタル化の波を「信頼」という視点から考察している点が大きな特徴といえます。

1.3 本書が取り扱う主な内容

本書では、従来のアナログや対面中心の環境で培われてきた“信頼”と、デジタル技術がもたらす新たな社会やビジネス環境との交わりを中心に議論が展開されます。具体的には以下のようなテーマが扱われています。

  1. デジタル化によるビジネス構造の変化
    • DX(デジタルトランスフォーメーション)が進行すると、企業間や個人間でのコミュニケーション手段や意思決定プロセスが大きく変わる。
    • その変化がどのように「信頼」のあり方に影響を与えるのかを分析。
  2. プラットフォーム企業やITベンダーの戦略
    • GAFAなどのグローバル企業が、デジタル技術をどう使って消費者や取引先との信頼関係を構築しているか。
    • 日本企業や公的機関のデジタル活用事例も取り上げ、比較しながら論じる。
  3. リーガル・リスクと信頼
    • デジタル技術活用の加速に伴い、データ取扱いやプライバシー侵害リスク、知的財産保護などの法的課題が増えている。
    • こうしたリスクへの対処が企業の「信頼」獲得や維持にどのように影響するかを考察している。
  4. 今後の社会・組織の在り方
    • 個人と組織の関わり方が、デジタル環境に適応していく中でどう変化していくのか。
    • 組織文化や人材育成の観点から「信頼」を構築する方法論についても提案している。

1.4 本書の特徴

  • 視点の多角性:経営学者と弁護士それぞれの専門知識が融合しており、技術面からの視点だけではなく、ビジネス戦略や法的リスクへのアプローチも含めて「信頼とデジタル」を多面的に論じています。
  • 具体的事例の豊富さ:国内外の企業の取り組みを事例として示しているため、抽象的な議論にとどまらず、実際のビジネスシーンで参考にできるヒントが多いです。
  • 社会的インパクトへの言及:企業や組織だけではなく、市民社会全般でデジタル技術を受容していくうえで必要となる「信頼」がどのように醸成されるかを考察し、公共的側面にも踏み込んでいます。

2. おすすめポイント

2.1 デジタル時代の「信頼」の意味を再定義している

デジタル化が進むほど人との直接的な関わりが減少し、情報のやり取りがオンライン主体になっていきます。その中で、従来の「顔を合わせる」ことで得ていた信頼と、テクノロジーを介したやり取りで生まれる新しい信頼の形を、丁寧に比較・検証している点が本書の魅力です。単に「テクノロジーは便利」という話だけでなく、信頼をどのように捉え直すかが大きなテーマとして扱われているため、読後には「人間関係」や「組織とのつながり」などを包括的に捉え直すヒントが得られます。

2.2 具体的かつリアルな企業事例が豊富

デジタル化の取り組みと信頼構築に成功している企業事例を多く取り上げているため、ビジネスシーンでの成功・失敗の具体例を知ることができます。たとえば海外のプラットフォーム企業の手法、日本の大手製造業やサービス業がDXを通して社内外の信頼を高めるプロセスなど、実践的な知見が多数紹介されています。文系・未経験の方がIT業界を志す際にも、「どのようなプロジェクトがあるのか」「会社がデジタル化を推進するためにどんなことをしているのか」をイメージしやすくなるでしょう。

2.3 法的リスク・社会的リスクの視点を学べる

デジタル技術を導入する際、プライバシー問題や情報セキュリティに対する懸念は避けて通れません。本書の著者の一人が弁護士であることから、法的リスクへの対策、契約やコンプライアンスの重要性といった観点が丁寧に解説されています。文系出身でITの技術面を専門的に学んでいない方にとっては、「技術の話にばかり目が行きがちだが、実際には法律や社会との調整が不可欠」という事実を理解できる貴重な内容になっています。

2.4 組織論・人材育成論の示唆が豊富

デジタル社会になっても最終的にサービスや製品を支えるのは「人」です。本書では、人と組織の関係性がどのように変わり、どのように適応していくかという視点から、人材育成の意義や組織文化の再構築についても提言しています。特に「信頼」を核とした組織づくりは、DXが単なる“IT導入”に終わらず、企業全体の変革につなげるために重要なテーマです。IT業界の仕事を目指す方にとって、入社後にどんな環境で働くのか、どんな役割が求められるのかを考える参考になります。

3. 文系・未経験からのIT就活への活かし方

3.1 「信頼」と「IT技術」を結ぶ言葉として活用する

文系・未経験でIT業界を目指す方は、面接やエントリーシートで「なぜIT業界なのか?」と聞かれることが多いでしょう。その際、「デジタル技術が普及し、人々が物理的に離れていてもつながる時代だからこそ、信頼の構築が重要になる」という視点を持ち出すと説得力が増します。本書で学んだ「デジタル時代の信頼とは何か」を自身の志望動機に盛り込むと、技術そのものだけでなく「人との関係性」や「社会への影響」を意識している点をアピールできます。

3.2 企業研究の切り口として活かす

書籍に登場する事例や考え方を、企業研究の切り口として使うのも有効です。多くの企業はDX推進を目指していますが、具体的な方法や目的、リスク管理はさまざまです。本書を参考に、

  • どんなプロジェクトで「信頼の構築」が鍵になっているか
  • 従来のビジネスモデルとデジタル技術をどう融合しているか
  • 法的・社会的リスクに対してどのように対応しているか
    などを調べると、「この企業はどのように信頼を築いているのか」を軸にした興味深い切り口が見えてきます。文系でも調査・分析力を示せるチャンスになるでしょう。

3.3 プロジェクトの進め方を学ぶ

ITプロジェクトやシステム開発の場面では、エンジニア以外にもプロジェクトマネジメントや調整を行うポジションが重要です。本書は信頼を軸にコミュニケーションやリスク管理の要諦を解説しているため、「文系だから開発のコードは書けないけれど、プロジェクト全体を円滑に動かす役割を担いたい」と考える方にも大いに参考になります。人と人のつながりを大切にしたマネジメントや、法的観点からのリスクヘッジを意識した業務支援などは、文系出身の強みを活かせる場面と言えます。

3.4 「信頼」をテーマに自己PRを組み立てる

面接の自己PRで「自分は人との信頼関係を大切にしてきた」というエピソードは、文系学生にとって比較的アピールしやすい内容です。例えば学生時代のサークル運営やアルバイト、ボランティア活動などの経験を、「チーム内の信頼をどのように育んだか」「トラブル時にどんな風にリーダーシップを発揮して解決したか」という文脈でまとめ、本書の内容を引用しながら「デジタル化の時代だからこそ、人同士の信頼をベースにITを活用したい」と訴えると、面接官にも強い印象を与えやすいでしょう。

4. NTTデータの選考への活かし方

4.1 DX推進企業としてのNTTデータを分析する視点を得る

NTTデータは幅広い業界に対してITソリューションを提供しており、官公庁や金融、通信、流通など多種多様な分野のデジタル変革を支えています。本書で得た「信頼構築」の視点を踏まえ、

  • どのようなクライアントとどんな関係性を築いているのか
  • 大規模プロジェクトにおいてどのように信頼をマネジメントしているのか
    などを企業研究で深堀りすることで、NTTデータが単なるシステム開発会社ではなく、クライアント企業のビジネスパートナーとして「信頼関係」を構築しながらDXを推進している姿勢を理解できます。それをもとに志望動機や面接時の質問への回答を準備すると説得力が高まります。

4.2 グローバル展開での“信頼”の重要性を語る

NTTデータは海外事業にも注力しており、グローバルなプロジェクトを数多く手掛けています。国や文化が異なる場合、「信頼」の形や築き方も一筋縄ではいきません。本書が示す多様な事例をもとに、

  • 異文化間のデジタルプロジェクトでは、どんなリスクとメリットがあるか
  • 信頼を構築するためには何が必要か
    などを自分の言葉で語れれば、「国際的な視点を持っている」「多様な価値観を尊重できる」というアピールにつながります。

4.3 コミュニケーション能力・調整能力のアピール

NTTデータの面接や選考プロセスでは、チームワークやコミュニケーション能力、調整能力がよく問われます。システム開発やコンサルティング業務では、エンジニアやクライアントなど、多くのステークホルダーと連携する必要があるからです。本書で学んだ「信頼を軸にしたコミュニケーション」がいかに大切かを理解していることを示し、自分自身のコミュニケーションの強みやエピソードと結びつけることで、選考においてより明確な自己PRが可能になります。

4.4 社会全体への影響を意識した志望動機

NTTデータは大規模インフラや社会インフラレベルでのシステム開発も手がけるため、個別企業だけでなく、社会全体へのインパクトが大きい事業に関わることが多々あります。本書が提起する「デジタル化と信頼の社会的意義」を踏まえ、

  • 自分がNTTデータで働くことを通して、どのように社会の信頼基盤を支えたいのか
  • どのような価値やミッションを実現したいのか
    を語れるようにしておくと、「単に技術やIT分野に興味があるだけでなく、より大きな視野で社会貢献を考えている人材」として評価されやすくなるでしょう。

5. まとめ

「信頼とデジタル」は、デジタル化が進む時代において、私たちがこれまで当たり前に感じてきた「信頼」という概念を改めて捉え直す絶好の機会を与えてくれる一冊です。
文系・IT未経験の方が本書を読むことで、テクノロジーと人との関わりを単なる“便利さ”の観点だけでなく、「信頼」「リスク管理」「法的視点」「組織論」など多角的に学ぶことができます。


特にIT就活では、企業がデジタル化によってどのように業務や社会貢献を変えているか、その中心にある「人とのつながり」をどう捉えるかが大きなアピール要素となります。NTTデータをはじめとする大手SIerやコンサル企業などは、クライアントとの信頼関係をベースにビジネスを発展させてきた側面が強く、本書を通じて得た知見を「自分なりの言葉」で語れれば、選考においても大きな武器になるでしょう。


ぜひ本書を読んで、「信頼」という視点からIT業界を見直すことで、デジタル時代のビジネスにおける重要な鍵を理解し、自身の強みをしっかりとアピールできるようになってください。

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