本記事では、建設業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性と、そのための戦略デザインについてわかりやすく解説した一冊「改革・改善のための戦略デザイン 建設業DX」(著:阿部守/秀和システム/2021年12月10日頃発売)を取り上げます。
本書は、業界が直面するさまざまな課題を洗い出し、どのようにデジタル技術を活用して改革や改善を進めていくのかを示唆してくれる内容です。文系・未経験からIT業界を目指す方にとっても、「そもそもDXとは何か」「現場での問題解決にはどんなアプローチがあるのか」といった疑問を解消するとともに、仕事で活かせるヒントが詰まった一冊となっています。
ここでは本書の概要、具体的なおすすめポイント、そして就職活動への活かし方を詳しくご紹介します。
1. 書籍の概要
1.1 タイトル
『改革・改善のための戦略デザイン 建設業DX』
1.2 著者・出版社
- 著者:阿部 守
- 出版社:秀和システム
- 発売日:2021年12月10日頃
著者の阿部守氏は、主に建設業界や社会インフラ領域のDX推進に関わってきた方で、実際の現場で直面する課題への深い知見をもとに、建設業全般にわたるDXのあり方を提示しています。出版社の秀和システムは、IT関連をはじめとするビジネス・技術書を多く手がけることで知られており、本書も実務に役立つ内容を重視する同社の方針が反映されたものとなっています。
1.3 本書が取り扱う主な内容
本書の中心的テーマは、「建設業界のDXをどのように推進していくか」という点にあります。建設業界は労働人口の減少や技術者不足などの課題に直面しており、新しい技術を活用した生産性向上と業務効率化が強く求められています。しかし、建設プロジェクトの進め方や各現場の環境はそれぞれ異なり、適用できるデジタル技術も多種多様です。本書では、単に「DXで現場をこう変えろ」と抽象的に述べるのではなく、
- 建設業界特有の問題や課題の整理
- 具体的なデジタル技術活用の事例紹介
- 改革・改善のための戦略的なアプローチ(戦略デザイン)の提案
といったステップを踏み、現場に応じた柔軟かつ戦略的なDX推進の方法を示しています。また、デジタル導入後のフォローアップや、人材育成・組織改革との連携にも言及しているため、総合的にDXを推進したい現場にとって実践的な内容となっています。
1.4 本書の特徴
- 建設業界特有のリアルな事例
建設現場での測量や施工管理、設計・図面管理など、具体的な業務プロセスを例に取り、どこにボトルネックがあるのか、どのようなテクノロジーが効果を発揮するのかが詳しく説明されています。単なる座学的なDX理論にとどまらず、実務のリアリティを踏まえている点が特徴です。 - 戦略立案から実践までを網羅
DXの文脈では「テクノロジーを導入すること自体が目的化しがち」という問題があります。本書では、まずはどのように課題を設定し、それに対してどんな戦略を描き、どのテクノロジーを活かしていくか、というプロセスを丁寧に解説します。さらに、導入後の振り返りや体制構築など、組織として持続可能なDXを実現するための手法までカバーしている点が大きな特徴です。 - 現場の意識改革とマインドセットにも着目
DXは技術的な導入だけで完結せず、「人」の関わり方が大きなカギを握ります。本書では、社内のITリテラシー向上や、職人のノウハウをデジタルに落とし込む上で必要なコミュニケーションなど、実際の“意識改革”についても言及しています。戦略と人材育成をセットで考え、DXを組織風土として根づかせるアプローチが提示されています。 - 将来を見据えた建設業界のビジョン
建設業界におけるDX推進の背景や意義、そして将来的に業界がどう変化していくのかというビジョンが示されています。大きな視点を持ちながらも、細かいステップを踏んで改革・改善を進めるための戦略デザインを提案している点は、本書を読むことで“業界自体がどこへ向かうのか”を把握できるメリットがあります。
2. おすすめポイント
本書を読む上で特に注目すべきポイントを4つに絞ってご紹介します。文系・未経験の方でも理解しやすい観点からまとめました。
2.1 現場と経営をつなぐ「DX戦略デザイン」
DXの本質は、単なるIT導入ではなく、「業務をどう変えていくか」「組織としてどう成長していくか」といったビジョンと戦略づくりです。本書では、建設現場で使われる具体的な技術(ドローンによる測量、BIM/CIMによる設計管理、IoTセンサー活用など)に関して、導入の手順や効果、注意点がまとめられていますが、そこにとどまらず、経営レベルでの戦略設計についても詳しく説明しています。文系・未経験の方からすると、技術の詳細ばかり語られると理解が難しい部分があるかもしれませんが、本書は「なぜその技術を使うのか?」「組織としてどんな変化を目指すのか?」を明快に示してくれるため、技術とビジネスをつなげて考えるスキルを身につけやすくなります。
2.2 豊富な実例でイメージしやすい
本書の大きな魅力は、建設業界で実際に起こっているDX事例が多数紹介されている点です。例えば、建築施工の過程で、図面を紙ではなくタブレットで管理し、リアルタイムに施工状況を共有することでミスを削減したケースや、センサーを配置して機材の稼働状況をモニタリングし、最適な配分を行う例など、具体的な導入プロセスと成果が紹介されています。文系出身の方でもイメージが湧きやすく、「こういった形でITが活かされているのか」と実感できるはずです。実務に根ざした生の事例を読むことで、IT業界における仕事の流れや、エンジニアの役割を理解する上でも大いに参考になります。
2.3 人材育成・組織文化へのアプローチ
DX成功のカギは「人材」と言われますが、建設業界は長年培われた職人技や現場主導の文化が根強い業界でもあります。本書はそうした“現場の空気”を変えていくために必要な人材育成や、組織のマインドセット変革をどう進めるかを丁寧に論じています。技術導入後の研修体制や、現場スタッフのITスキル向上策、社内コミュニケーション設計など、「結局、人が動かなければDXは実現しない」という点を踏まえた戦略デザインが特徴です。文系の方がIT企業へ就職を考える場合でも、「技術そのもの」だけでなく、組織改革や人材育成の観点からプロジェクトを支える役割が求められることが多いため、本書の内容は視野を広げる意味でも役立つでしょう。
2.4 社会課題と絡めたDXの意義
建設業界におけるDXは、単なる業務効率化にとどまりません。労働力不足や高齢化、インフラ老朽化など、日本社会全体が直面する課題と密接に関わっています。本書は、こうした社会課題の解決策としてDXをどう位置づけるかに焦点を当て、業界と社会の未来を見据えたビジョンを提示しています。文系・未経験の方でも、「ITを通じて社会課題を解決したい」「今後伸びていく分野で働きたい」という意欲を持っている方は多いでしょう。本書を読むことで、「どのようにITを使って社会の課題を解決していくのか?」という視点を得られ、自分のキャリアデザインにも生かしやすくなります。
3. 文系・未経験からのIT就活への活かし方
ここからは、文系・未経験の方が本書をどのように読み、IT就活にどのように活かせるかを4つの観点からご紹介します。
3.1 DXの全体像を理解するための入門書として活用
文系・未経験の方がIT業界を目指すとき、「DX」という言葉を聞いたことはあっても、具体的に何を指すのかわからないというケースは多いです。本書では、建設業界の背景から始まり、どのようにDXが必要になったのか、具体的な技術や人材戦略とともに解説しています。特定業界でのDX事例を通して、DXとは何かを体系的に理解できるため、就活において「DXを説明できますか?」と聞かれた際に、自分の言葉で回答しやすくなるでしょう。さらに、DXがビジネスのどこに影響を与えるのかを学ぶことで、自分の志望動機や将来像をより具体的に描くことができます。
3.2 業務改善・課題解決の思考を身につける
本書が扱う「改革・改善のための戦略デザイン」は、単にITの知識を増やすだけでなく、課題発見能力やロジカルシンキングの向上にもつながります。文系・未経験の方は、IT技術そのものに関してはまだ学習中というケースが多いと思います。しかし、どの企業でも求められるのは「自社の業務やクライアントの業務をどのように効率化するか?」という課題解決力です。建設業界の事例を自分の興味のある業界や職種に置き換えてみるだけでも、「現場ではどんな課題があって、どうやって整理すればよいのか」「DX導入の手順や注意点はどうなっているのか」といった思考プロセスを学べます。こうした問題解決型のアプローチは、ITコンサルやシステムエンジニア、プロジェクトマネージャーの仕事など、どのポジションでも大いに役立つはずです。
3.3 コミュニケーション力を高めるヒントを得る
DX推進では、現場スタッフや経営層、ITベンダーなど多様なステークホルダーとの協力が欠かせません。本書は建設業界におけるDX推進の事例を通して、異なる立場の人をどう巻き込んでいくか、現場の意見をどのように集約していくかといった、コミュニケーションの具体的な工夫が語られています。文系の方にとって大きな強みになるのは、このような調整力や橋渡し役としてのスキルです。ITエンジニアが技術サポートを行う一方で、文系出身の方が「現場の要求を理解し、必要な技術を分かりやすく説明する」という役割を果たすことで、チーム全体の生産性を高めることができます。本書を通じて得た知見を、自分の強みとしてPRすることで、就活時に「コミュニケーション力」をアピールしやすくなるでしょう。
3.4 社会課題に向き合う視点を自己PRに生かす
本書が伝える建設業界のDXは、高齢化やインフラの老朽化など、社会全体の課題解決に深く関わっています。文系・未経験の方がIT業界に入りたいと思う理由のひとつに、「社会に貢献したい」「スケールの大きな課題解決に携わりたい」というモチベーションがあるかもしれません。本書が提示する大きな視点をもとに、「私はIT技術を活用して社会課題を解決したい」という自己PRを組み立てることができます。たとえば、建設業界が抱える課題を自分なりに整理し、「その課題に対してどんなIT技術やプロジェクトマネジメントが有効か」を考えることで、就活時の志望動機やビジョンをより説得力のある形で語ることができるでしょう。
4. まとめ
「改革・改善のための戦略デザイン 建設業DX」(著:阿部守/秀和システム)は、建設業界のDX推進をテーマにしながらも、「DXとは何か」「どうすれば現場の課題を解決できるのか」「組織として変わるには何が必要か」といった普遍的な問いに対するヒントを豊富に提供してくれる一冊です。文系・未経験の方がIT業界への就職を考えるうえでも、下記のような学びが得られます。
- DX導入の全体像と具体的なアプローチ
- 業務改善や課題解決の思考法
- 人と組織を動かすコミュニケーションのポイント
- ITを通じた社会課題の解決に向けた大きなビジョン
建設業界の話が中心ではありますが、その本質はどんな業界にも通じる「変革と改善のためのデザイン思考」を学ぶことにあります。IT企業やコンサルティングファームだけでなく、一般企業の情報システム部門など、あらゆる場所でDX推進の波が起こっている現代だからこそ、こうした戦略的な思考やプロジェクト事例を知っておくことは大きな強みになるでしょう。
就職活動では、「ITを使って何がしたいのか?」を明確に伝える必要があります。本書をきっかけに、ITが現場でどのように使われているかをリアルにイメージできるようになれば、志望動機づくりや面接時の自己PRでも説得力が増すはずです。社会のインフラを支える建設業界でのDX事例を学ぶことで、ITが地域や社会に与えるインパクトの大きさを理解できることも本書の魅力。未経験だからこそ得られるフレッシュな視点と、本書を通じて身につけた知識を掛け合わせることで、自分ならではのキャリアビジョンを描いていけるのではないでしょうか。
もし、「DX推進」や「課題解決型の仕事」に興味を持っているなら、本書は非常におすすめです。読了後は、自分のやりたい職種に合わせて「この部分は自分の志望先にも応用できるかも」「こういう技術や進め方があるなら自分のキャリアに活かせる」といった気づきがあるでしょう。文系・未経験からIT業界を目指す皆さんには、ぜひ手に取ってほしい一冊です。
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