【書評】改革・改善のための戦略デザイン 自治体DX

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本記事では、文系・未経験からIT業界への就職を目指す方々に向けて、『改革・改善のための戦略デザイン 自治体DX』(宮里 隆司 著、秀和システム 刊)を紹介します。本書は自治体におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の進め方や戦略、事例が豊富に取り上げられており、一見すると「公的機関向けの内容だから自分には関係ないのでは?」と思われるかもしれません。

しかし、文系・未経験からIT分野へ挑戦しようとする人にとっても得られる学びは多く、特に“組織を動かし、変革・改善を行うための基本姿勢やマインドセット”といった面が丁寧に解説されています。これからIT就活を進めるうえでも大いに参考になる内容ですので、ぜひ最後までお読みください。

1. 書籍の概要

1.1 タイトル

『改革・改善のための戦略デザイン 自治体DX』

1.2 著者・出版社

  • 著者:宮里 隆司(みやざと りゅうじ)
  • 出版社:秀和システム
  • 刊行日:2021年12月10日

1.3 本書が取り扱う主な内容

本書は、自治体DXを推進するために必要な戦略や組織設計、プロジェクトマネジメントのポイントを解説する一冊です。
特に以下のようなトピックが中心になっています。

  • 自治体が抱える課題とDXの必要性
    人口減少や行政サービスの複雑化、高齢化社会などが進む中で、効率的・効果的に行政を運営するためにはDXが不可欠であるという問題提起から始まります。
  • 自治体DXの全体像と推進手順
    DXの基本的な定義や具体的な進め方、必要とされる組織体制やガバナンスの在り方が分かりやすくまとめられています。
  • プロジェクトマネジメントと戦略デザイン
    改革・改善を続けるためには、一度きりの施策ではなく、中長期的に継続する仕組みづくりが必要になります。そのために必要な戦略デザインの基本、現場の巻き込み方、KPI設計などが詳しく解説されています。
  • 先行事例・事例研究
    本書の後半では自治体や他組織で実際に行われたDX施策の事例が紹介されており、理論だけでなく現場での具体的イメージも得られるようになっています。

1.4 本書の特徴

  1. 自治体特有の課題に沿ったDX解説
    企業向けDXとの比較で語られるケースが多い中、本書は自治体という公的機関ならではの制約や課題に対して、どのようにデジタル技術を活用していくかを具体的に提示しています。
  2. 図表やケーススタディが豊富
    理論だけを語るのではなく、要点を押さえるための図解や、自治体改革の事例を多く掲載しています。抽象的な概念をイメージしやすく工夫されている点が特徴です。
  3. “戦略デザイン”に重きを置いた構成
    単なるシステム導入ではなく、組織文化やマインドセットを変える「変革」そのものをどうデザインするか、という視点が貫かれています。とりわけ、IT活用の目的をどこに置くのか、具体的なロードマップをどう描くのかといった「戦略思考」が繰り返し強調されています。
  4. 実務者・非IT部門でも理解できる丁寧な解説
    自治体職員の方やIT分野に詳しくない読者でも読み進めやすいよう、専門用語をかみ砕き、必要に応じて背景知識が補足されています。そのため、文系出身や未経験でもスムーズに内容を把握できる構成です。

2. おすすめポイント

2.1 自治体における「人・組織・予算」の制約を乗り越えるヒント

自治体DXは、企業と比べると「人手不足」「ITスキルの偏在」「財政規模」「法規制」など、より多くの制約が存在します。本書では、このような制約をどうやって克服し、効果的に成果を上げるか、具体的な施策を取り上げています。IT業界を目指す上でも、“制約下での創意工夫”は重要なスキルとなるため、応用可能なヒントが満載です。

2.2 戦略デザインとプロジェクトマネジメントの実践的アドバイス

DX推進の成否を分ける大きな要因の一つが、プロジェクトマネジメント能力です。本書では、システム導入だけにとどまらず、組織全体を巻き込んだ「戦略の設計・運用方法」が詳説されています。こうしたプロジェクト全体を見渡す視点や、ステークホルダーとの調整は、ITに限らずさまざまな業務領域でも求められる能力です。文系の方でも身につけやすく、「自分にもできるかも」と感じられる点が大きな魅力でしょう。

2.3 現場目線の事例が豊富でイメージしやすい

自治体特有の課題や具体的な成功事例・失敗事例が多数取り上げられており、単なる理論書に留まらないのが本書の強みです。特に、「どのようなプロセスを踏んでプロジェクトを進めたか」が具体的に分かるため、現場レベルでの困難や工夫が見えてきます。ITプロジェクトやデジタル化においては、「作って終わり」ではなく運用段階で様々な課題が噴出しやすいもの。本書の事例からは、そうした課題解決のリアルな姿を学べるでしょう。

2.4 IT初心者でも理解しやすい体系立てられた構成

専門用語の解説や背景となる文脈の説明が適宜挟まれているため、自治体の内情やDXの全貌が分からなくても読み進めやすい一冊です。文系・未経験の方が、本書をきっかけに「DXとは何か」「DXがなぜ必要とされているのか」を体系的に理解できる構成になっています。IT企業への就職活動で「DX推進とは具体的にどんなことか?」という質問に対して、ある程度の具体例を踏まえて話せるようになる点もメリットです。

3. 文系・未経験からのIT就活への活かし方

ここからは、文系・未経験の方が実際にIT就活でどのように本書の学びを活用できるか、具体的に見ていきましょう。

3.1 DXの全体像を理解して“俯瞰力”をアピール

本書を通じて学べるのは、単にITツールを導入する話だけがDXではなく、組織変革や業務改革、利用者(市民)目線のサービスデザインが一体となった取り組みだということです。
IT業界の採用面接では「デジタル技術を使って具体的に何を実現したいか?」と問われることが多いですが、そこで「組織全体を俯瞰する」「利用者目線を考慮する」といった視点を語れると強みになります。文系出身の方でも、こうした上流の考え方ができる人材は歓迎されやすいので、本書の内容をヒントに“DXの全体像を捉える力”をアピールしてみましょう。

3.2 プロジェクトマネジメントの基礎を吸収して“調整力”を強みに

ITプロジェクトは多くの人と協力する集団作業であり、技術力以上に「調整力」や「コミュニケーション力」が求められます。本書では、自治体がどのように部門横断でプロジェクトを進めているのか、具体例をもとに解説しており、ステークホルダーの巻き込み方や、プロジェクト推進のコツを学ぶことができます。
文系・未経験の方は、技術的な専門知識が乏しいと感じるかもしれませんが、逆に「人をつなぎ、対立を解消しながら目標に向かう力」は大きな武器になり得ます。本書を参考に、プロジェクトマネジメントの基礎を理解し、自分なりの具体的エピソードと絡めてアピールすることで強い印象を残せるでしょう。

3.3 “現場の声”を重視する姿勢から“ユーザーファースト”を学ぶ

自治体DXの事例を読んでいると、現場スタッフや住民からの声を積極的に取り入れているケースが目立ちます。この姿勢は企業のDX推進でも同じで、“利用者・顧客の声を丁寧に汲み取り、使いやすい仕組みを作る”という基本姿勢が大切です。
IT未経験であっても、ユーザーファーストの発想は、システム開発やサービス企画のあらゆる局面で必ず求められます。面接でも「ユーザー視点の重要性」について言及できると評価が高いです。本書の事例を通じて、「なぜ現場や利用者の声が重要なのか?」をしっかり理解しておくとよいでしょう。

3.4 改善マインドと継続的アプローチの重要性を体得

DXを実行するうえでは、“やって終わり”ではなく、継続的に改善し続けるという姿勢が不可欠です。自治体の事例でも、新しいシステムを導入して終わりではなく、施策を段階的に拡充したり、利用者のフィードバックに応じて調整を重ねたりといった地道な改善が効果を上げています。
IT企業においても、システム導入後の運用保守やユーザーサポートといった後続フェーズでの対応力が評価されることが多いです。面接やES(エントリーシート)で、「継続的な改善サイクルを回す姿勢」をどのように磨いてきたかを伝えられると好印象につながります。本書の視点をベースに、自分の過去の経験(アルバイトや部活動など)に当てはめて語ると、説得力が増すでしょう。

4. まとめ

『改革・改善のための戦略デザイン 自治体DX』は、自治体におけるDX推進の手法や事例が解説されている一冊ですが、その本質は「組織や利用者の課題を洗い出し、デジタル技術を活用して変革・改善を続ける」という普遍的なテーマにあります。文系・未経験からIT業界を目指す方にとっても、プロジェクトマネジメントやユーザーファーストの考え方、継続的な改善マインドなど、大いに学ぶべき要素が含まれています。


IT就活ではどうしてもプログラミングスキルや専門用語の知識不足が不安になるかもしれませんが、本書のように“DX全体を俯瞰して変革に寄与する”という視点を持つことは、エンジニア志望・総合職志望を問わず大きな強みとなるでしょう。面接や志望動機の説得力を高める上でも、自治体DXという事例を踏まえて話すことで、“課題解決に向けた主体的な思考や調整力”をアピールできます。


ぜひ本書を活用し、DX領域への理解を深めてみてください。文系・未経験であっても、自分の強みや過去の経験と組み合わせることで、IT業界で求められる人材へと成長していく道が必ず開けるはずです。あなたのIT就活がより具体的で充実したものになりますよう、心から応援しています。

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