本記事では、文系・未経験からIT業界への就職を目指す方々に向けて、三輪大輔著『改革・改善のための戦略デザイン 外食業DX』(秀和システム、2021年12月21日刊)を紹介します。本書は外食産業を中心にDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるための戦略やデザインについて解説しており、文系・未経験の方がITの知識を身につけるうえでも示唆が多い一冊となっています。本書の内容とおすすめポイント、そして文系・未経験者がどのようにIT就活に活かせるかをご紹介します。
1. 書籍の概要
1.1 タイトル
『改革・改善のための戦略デザイン 外食業DX』
1.2 著者・出版社
- 著者:三輪大輔
- 出版社:秀和システム
- 出版日:2021年12月21日
著者の三輪大輔氏は、外食産業を中心にコンサルティングや事業推進に携わってきた経験を持つ専門家です。デジタル技術を用いた業務改革だけでなく、組織全体のマネジメントや戦略立案などにも造詣が深く、本書では「外食業界をどうDXしていくのか」という実践的な視点を豊富な事例とともに解説しています。
1.3 本書が取り扱う主な内容
本書の主なテーマは「外食業DX」ですが、その内容は単なるITツール導入の解説にとどまらず、企業経営そのもののあり方をどう変革し、改善していくかに焦点を当てています。具体的には下記の内容が扱われています。
- 外食業界の現状と課題
コロナ禍を経て変化した消費者の行動や、外食業界が直面している人手不足・コスト高騰などの課題を整理しています。 - DXの基本概念・戦略設計
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何かという基本的な概念から、どのようにして企業内でDXを進める組織体制や戦略を作り上げていくかを解説しています。 - 外食産業における具体的なDX施策
データ活用、モバイルオーダーシステム、顧客管理システム、クラウド型予約管理システムなど、外食産業ならではのDX事例・ITシステム活用例が具体的に紹介されています。 - 戦略デザインと業務改革
企業がDXを進める際には、全体のビジョン設定・目標設計・組織体制の変更など、一貫した戦略デザインが必要です。本書ではそのプロセスがわかりやすく図解され、どのように改革・改善を進めるべきかが段階的に示されています。 - DXを支えるマネジメント・リーダーシップ
デジタル技術だけではなく、DXを支える組織改革や社員教育、チームマネジメントなどのソフト面の重要性についても取り上げ、リーダーシップの発揮方法について具体例とともに述べています。
1.4 本書の特徴
- 戦略論と実践論の融合
DXの概念や重要性を理論的に説明するだけではなく、外食業界という具体的なフィールドで得られた事例を豊富に盛り込むことで、「実際にどう動けばいいか」が明確にイメージできる構成になっています。 - 経営者・マネージャー目線と現場目線のバランス
企業全体の方向性を示す戦略デザインから、現場オペレーションの改善まで幅広くカバーしています。トップダウンだけでなく、現場の従業員がDXをどう捉え、どう参画すれば成功につながるかというポイントもしっかり提示しています。 - 図表やフレームワークが豊富
戦略や施策のプロセスを図式化して解説しているため、文系・未経験の人でも理解しやすいように配慮されています。読みながら自社の課題を整理し、アイデアを具体化するためのヒントを得られるでしょう。 - DXの本質としての「ビジネスモデル変革」
単にデジタルツールを導入するのではなく、ビジネスモデルや企業文化そのものを変えていく必要があることを強調している点が特徴です。外食業界だけでなく、他の業種にも応用可能な視点が多く含まれています。
2. おすすめポイント
2.1 DX推進のプロセスを段階的に理解できる
本書では、DX推進を段階的に整理しており、「分析→設計→実装→検証→改善」という流れで解説されています。文系出身の方や、ITにまだ馴染みがない方でも、「プロジェクトをどのように計画し、どのように進めていけばよいのか」を体系的に学ぶことができます。特に外食業界における事例が豊富なので、抽象的なイメージになりがちなDXが具体的に捉えやすいでしょう。
2.2 具体的なITツールと業務改善のリンクがわかる
DXの中核にはITツールやデジタル技術の導入がありますが、本書ではその導入が「どのように業務改善や顧客満足度向上につながるか」が明快に示されています。モバイルオーダーや予約管理システム、顧客データベースなどの仕組みが、現場の作業効率をどのように向上させ、経営にどのようなメリットをもたらすのか、具体的な数値やフロー図を用いて解説されています。
2.3 経営者やマネージャーの視点だけでなく、現場視点も学べる
DXを成功させるには、会社全体を巻き込むことが不可欠です。経営陣がトップダウンで導入を決めても、現場の従業員が十分に理解・納得しないままでは施策がうまく機能しないからです。本書では「現場で働く人にとって使いやすい仕組みとは何か」「従業員に必要な教育やモチベーションはどう高めるのか」など、現場レベルの課題にも言及しています。こうした点は、人間関係やコミュニケーションの側面を意識して仕事をしたい文系の方にとっても大変参考になります。
2.4 デジタル技術を取り入れた新しい外食ビジネス像が描かれている
外食業界は店舗オペレーションのイメージが強く、「DXとどう関係するのか想像しづらい」という方も多いかもしれません。しかし本書では、デジタル技術を活用した新しいビジネスモデルの可能性が多数紹介されています。たとえば、店舗運営とEC・デリバリーサービスの融合、サブスクリプション型サービスの導入、AIを使った需要予測など、今後の外食ビジネスを大きく変えていく事例がわかりやすく示されています。こうした事例は他業種にも応用可能であり、「デジタルで世の中をどう変えるか」を考える上でも大いに刺激になります。
3. 文系・未経験からのIT就活への活かし方
では、文系でIT未経験の方が、この本をどのように就職活動に活かせるでしょうか。本書は外食業界に特化したDX解説書である一方で、企業改革やビジネスモデル変革の普遍的な考え方も数多く含まれています。以下では、具体的な活かし方を4点に分けてご紹介します。
3.1 DXの全体像を把握し、自身の強みをアピールする
文系・未経験の方がIT業界を志望する際、「IT技術に自信がない」という不安を抱きがちです。しかし、本書を読むことでDX推進に求められるスキルはエンジニアリングだけではないと理解できるはずです。たとえば、プロジェクトを円滑に進めるためのコミュニケーションスキルや、ユーザー(お客様・従業員)の視点を捉える顧客志向、新しいビジネスモデルを提案する企画力など、文系出身者が得意としやすい領域も多く存在します。
就活でアピールする際には、DXの全体像を踏まえたうえで「私は現場の声を拾い、業務とITを繋ぐ役割ができます」といった形で自分の強みを示すと効果的です。
3.2 ビジネスモデル変革の視点を身につける
IT業界に限らず、あらゆる業種・企業でDXが進められています。その大きな柱の一つが、企業のビジネスモデルや組織構造の変革です。本書を通じて、外食業界という具体的な事例を学ぶと、「どのように企業は新しい収益源を作り出し、デジタル技術を活用していくのか」がイメージしやすくなります。
就職活動において企業研究をする際、自社のビジネスモデルがどのように変わり得るか、ITを使ってどのような付加価値を提供できるか、といった視点で考えるヒントになるでしょう。文系であっても、「企業がどうお金を稼ぎ、どう成長するのか」というビジネスモデルの基本は理解しておく必要があります。本書を読むことでDX時代におけるビジネスモデル変革の感覚を養うことができます。
3.3 経営者目線・現場目線を両立したコミュニケーションを学ぶ
DXでは、経営層と現場スタッフをつなぐコミュニケーションが不可欠です。本書は、トップマネジメントの視点と現場の視点をどのようにすり合わせ、成果を生むかという点で具体的な事例を紹介しています。
就活やビジネス現場において、「上の意図を理解しつつ、現場の意見を汲み取り、両者を調整する」という能力はあらゆる職種で重宝されます。文系・未経験の方ほど、「私はエンジニアリング専門ではないけど、部署間の連携を促進してプロジェクトを成功させる力を磨きたい」という志向を持ちやすいです。本書から得られる知見をもとに、面接などで「現場と経営を繋ぐ役割として貢献したい」と具体例を交えながら話せるようになれば、大きなアピールポイントになるはずです。
3.4 ITシステムの具体例から学ぶITリテラシー向上
本書は外食業界のDXに特化しているため、モバイルオーダーや予約管理システム、在庫管理、データ分析など比較的わかりやすいITシステムが多く紹介されています。文系・未経験の方にとって「IT」と言うと抽象的に感じるかもしれませんが、身近なサービスを切り口に学べば理解が進みやすいでしょう。たとえば、飲食店で導入されているタブレット注文やオンライン予約など、利用者として身近に体験したことのあるものから学ぶのが効果的です。
本書で紹介されている具体的なIT施策や導入事例を踏まえれば、ITリテラシーを高めると同時に「実際にどのようにプロジェクトが動くのか」をイメージしやすくなります。就活の面接などでも、「飲食業界ではこのようなシステムが使われており、こういう効果があると感じました」と具体例を交えて話すと説得力が増すでしょう。
4. まとめ
三輪大輔著『改革・改善のための戦略デザイン 外食業DX』は、外食業界を題材にDXの基本から実践的な戦略デザインまで丁寧に解説しています。単にITツールを導入すればよいという話ではなく、企業のビジネスモデルや組織をどう変革し、改革・改善を進めるかという視点が徹底されているのが特徴です。
文系・未経験者がIT就活に活かすポイントとしては、「DX推進にはコミュニケーション力やビジネス理解が重要である」という本書の内容をもとに、自分の強みをどう発揮できるかを考えることが挙げられます。また、外食業界でなくとも、他業界でDXがどのように進められているかイメージする助けにもなるでしょう。
DXは業界を問わず、企業の新たな成長機会や働き方の変革を生むキーワードとなっています。外食業界が抱える課題と、それを解決するためのDX事例を学ぶことで、「企業でどのようにプロジェクトが進められ、ビジネスモデルが変わっていくか」という大局観を得られるはずです。就職活動に向けてITリテラシーを高めたい方、戦略的思考を身につけたい方にとって、非常に参考となる1冊としておすすめします。