本記事は、文系出身でIT業界未経験の方が「自分のために働く」(岩本敏男著、ダイヤモンド社、2018年10月26日刊)を読むことでどのような学びを得られ、具体的にIT就活やNTTデータの選考にどのように活かせるかという視点を中心にまとめた書評です。
特に「自分のキャリアの主導権を握り、主体的に働くにはどうしたらよいか?」というテーマが貫かれている本書は、これからIT業界を目指す文系・未経験の方にとって、大企業・組織での経験を踏まえつつ自分らしく成長するための示唆が多く含まれています。
1. 書籍の概要
1.1 タイトル
「自分のために働く」
1.2 著者・出版社
著者:岩本 敏男
出版社:ダイヤモンド社
出版日:2018年10月26日
著者の岩本敏男氏は、NTTデータの代表取締役社長を務めた経験を持ち、国内外の大規模プロジェクトや事業拡大をリードしてきた経歴を持ちます。IT業界の最前線で組織を牽引しながら培ったリーダーシップ論やキャリア論が、本書のベースとなっています。
1.3 本書が取り扱う主な内容
本書では、「組織のために働く」のではなく「自分のために働く」という姿勢を軸に、以下のようなトピックが中心に語られます。
- 自分軸を持ったキャリア形成
企業の論理や上司の指示だけに従うのではなく、自分自身が納得できるキャリアをどのように歩むか。 - 挑戦と失敗の活かし方
大企業の安定に甘んじるのではなく、リスクをとって挑戦することや、失敗から学ぶプロセスの重要性。 - リーダーシップの本質
組織をマネジメントするだけでなく、周囲を巻き込みながらイノベーションを起こすために必要なリーダーシップの在り方。 - グローバルな視点
国際的に展開してきたNTTデータの事例を通じて見える、海外との仕事の進め方や異文化理解の必要性。
1.4 本書の特徴
本書の特徴は、著者が実際にNTTデータで世界規模の事業を率いた経験を基に、「企業人」としてのキャリア形成論だけでなく、一人の人間として「自分の意志とやりたいこと」をどう仕事に結びつけるかを具体的なエピソードとともに語っている点です。単なる自己啓発書にとどまらず、「組織の枠内でこそ自分らしく働けるはずだ」という示唆が豊富に含まれています。
2. おすすめポイント
2.1 「自分軸」を見失わない方法が明確に描かれている
本書の大きなテーマは、タイトル通り「自分のために働く」ことです。多くの人が大企業に就職すると、与えられた仕事をこなすことに集中してしまい、いつの間にか「会社のために、自分がいる」ような感覚を抱きがちです。しかし著者は、常に「自分は何をやりたいのか」「自分にとって意味のある仕事は何か」を問い続ける大切さを説きます。大企業だからこそ、組織に振り回されずに自分の軸を保つ重要性が強調されており、これは就活の段階で「企業に合わせる」という意識が強くなりすぎがちな方にとっても大いに参考になるでしょう。
2.2 組織の中で挑戦することの価値
本書の随所には「挑戦しなければ何も変わらない」というメッセージが散りばめられています。岩本氏自身が、グローバルプロジェクトに挑戦し続けるなかで得た体験談が語られ、組織の中であっても大いにリスクを取って自分のキャリアを切り開く姿勢の大切さが伝わってきます。特にIT業界は技術変化のスピードが早く、未経験の文系出身者からすると敷居が高いと感じるかもしれません。しかし、社内外を問わず新しいスキル習得やプロジェクトへの参加を積極的に求め、何度失敗しても挑戦し続けることでこそ道が開けるという考え方は、就職後にキャリアを形成する上で大変参考になるはずです。
2.3 多面的なリーダーシップの在り方
「リーダーシップ」と聞くと、カリスマ型やトップダウン型を想起しがちですが、本書では「組織内リーダーシップ」という形で、多様な人材やチームをまとめるための具体的なポイントが提示されています。例えば、海外案件で得た異文化チームマネジメントのノウハウや、現場のモチベーションを高めるコミュニケーションなど、相手の立場を理解しつつ、全体を導いていく力が強調されています。文系であってもコミュニケーション能力を活かし、チームを円滑に進める存在になれるという示唆があり、「自分には技術がないから…」と尻込みしがちな方に、前向きな活路を示してくれます。
2.4 グローバル視点で仕事を捉える重要性
著者が社長を務めたNTTデータは、国内だけでなく海外の大規模企業買収やグローバル展開を積極的に行ってきました。本書でもグローバル案件のエピソードがふんだんに登場し、異文化間コミュニケーションや、海外での事業展開における重要な気づきが紹介されています。IT企業はグローバル化が一段と加速しているため、どのような立場であっても「海外の企業やメンバーと一緒に仕事をする可能性がある」ことを意識しておく必要があります。文系出身者が強みとする語学力や異文化理解力をどのように活かせるか、具体的なヒントが得られる点は大きな魅力です。
3. 文系・未経験からのIT就活への活かし方
3.1 「自分のために働く」の具体的ビジョンを描く
就職活動では、企業の求める人物像に自分を合わせようとしがちです。しかし、文系・未経験であっても、「なぜIT業界で働きたいのか」「ITを使ってどんな課題を解決したいのか」といった自分の視点を明確にすることが大切です。本書を読むと、自分の軸を持つことの意義や、その軸を持ち続ける難しさと価値が具体的に理解できます。志望動機を考える際も「企業が求めること=自分がやりたいこと」に近づくような接点を見いだし、自分の言葉で語れるようにすることで、説得力のある志望理由を伝えられるでしょう。
3.2 変化を恐れず、新しいスキルに挑戦する
IT業界は日進月歩で技術やトレンドが変わります。本書では、大企業の安定を捨てるわけではなくとも、常に新しい挑戦をすることでこそ成長があると強調されます。文系・未経験者にとっては、プログラミングやデータ分析など未知のスキルを習得するハードルが高いかもしれません。しかし「挑戦には失敗がつきものであり、失敗を恐れない姿勢こそが成長への鍵」という考え方を取り入れれば、オンライン学習や勉強会への参加、インターンシップなどを通じて積極的にスキルを身につけていくことに前向きになれるはずです。
3.3 チームワークやコミュニケーション能力の強みを活かす
著者が強調するリーダーシップの在り方は、常に相手の立場や国際的な背景も考慮する「多面的」なものです。IT業界では、一人で完結する仕事よりも、複数人で連携して進めるプロジェクトが圧倒的に多く、コミュニケーション力やチームをまとめる力が大いに求められます。文系出身の方は、文章力や語学力、プレゼンテーション能力など、人とのやり取りを円滑にする力を武器にしやすいはず。本書のリーダーシップ論を参考に、自分ならではのコミュニケーションスタイルを確立していくとよいでしょう。
3.4 グローバル思考を意識したキャリアプランを構築する
ITサービスは国内だけで完結することは少なく、グローバルに展開されるケースが増えています。本書にもあるように、多国籍プロジェクトや海外子会社との連携など、将来的に海外と関わる機会は想像以上に多いといえます。文系・未経験の方でも、英語力や異文化コミュニケーションへの興味を伸ばしていけば、グローバルな環境でこそ役立つ人材になれる可能性があります。就職活動の段階から視野を広げ、海外展開をしている企業や海外案件に強い企業も含めて検討してみることで、長期的なキャリア形成の幅を大きく広げられるでしょう。
4. NTTデータの選考への活かし方(4つ)
著者の岩本氏が社長を務めていたNTTデータは、日本を代表するIT企業の一つであり、金融から公共、製造、流通など多岐にわたる分野のITシステムを手がけています。文系・未経験の方も積極的に採用しており、大規模プロジェクトやグローバル案件の経験を積める可能性が高い企業です。本書の内容を踏まえ、NTTデータの選考に活かせるポイントを4つにまとめます。
4.1 「自分のために働く」姿勢を自己PRで示す
NTTデータは大企業でありながら、社員一人ひとりの主体性やチャレンジ精神を重視しています。選考では、会社に合わせてアピールするだけでなく、「自分は将来どのようなITサービスを実現したいのか」「社会にどんな価値を提供したいのか」といったビジョンを語り、「そのためにNTTデータというフィールドをどう活かすか」を具体的に伝えると説得力が増します。本書を通じて学べる「自分軸」の作り方や保ち方を踏まえて、自分ならではのキャリアビジョンをしっかり伝えましょう。
4.2 チャレンジへの意欲を具体的エピソードで示す
本書では、著者自身が積極的に新規事業や海外プロジェクトに挑戦してきた体験が紹介されています。NTTデータは今後も新たな技術領域(AI、データサイエンス、クラウド、セキュリティなど)や海外市場での事業展開を進めていくため、変化を恐れずに行動できる人材が求められます。たとえIT未経験であっても、過去の学生時代やアルバイト、サークル活動などで「新しい環境や役割に飛び込んだ」「失敗しながらも学んだ」エピソードがあれば、それを明確に伝えるとよいでしょう。
4.3 コミュニケーション力・チームワーク力を強調する
NTTデータのプロジェクトは複数の部署や協力会社、さらに海外拠点など、多様な人々と協業しながら進められるケースが多いです。文系・未経験であっても、円滑なコミュニケーション力や相手のニーズを正確に捉えるヒアリング力は大きな強みとなります。本書で語られるリーダーシップ論や異文化コミュニケーションのエピソードを参考に、「自分はチームのなかでどんな役割を担い、どう成果に貢献できるか」を明確にPRすることで、ITの専門知識がまだ浅くても評価される可能性が高まります。
4.4 グローバルな視点と意欲をアピールする
NTTデータはすでに世界中に拠点を持ち、M&Aや合弁事業を通じてグローバル化を進めています。本書から得られる「異文化理解の重要性」や「海外プロジェクトでの苦労と成長」のエッセンスは、まさにNTTデータの選考でも活かせます。英語力がそこまで高くなくても、「海外メンバーと協働しながら仕事を進めてみたい」「新しい文化を学び、自分の視野を広げたい」という意欲や姿勢を積極的にアピールすることで、企業側にも「この人は成長余地が大きい」と好印象を与えられるでしょう。
5. まとめ
「自分のために働く」(岩本敏男著)は、IT業界を中心にキャリアを築いてきた著者自身の経験から得たメッセージが詰まった一冊です。「自分軸を失わずに働くこと」「挑戦と失敗を恐れない姿勢」「リーダーシップとコミュニケーション」「グローバル視点の重要性」といったポイントは、文系・未経験でこれからIT業界を目指す方にとっても有益な示唆が満載です。
とくに大企業へ就職する場合、「会社に合わせる」ことが得策にも思えますが、本書が繰り返し強調するのは、自分自身の想いやビジョンを忘れずに働くことの意義です。むしろ大企業のほうが多様な部署や海外案件が存在し、自分のやりたいことを具体化しやすい可能性もあります。NTTデータの選考においても、企業のスケールを活かして何に挑戦したいのか、どんな価値を生み出したいのかを明確に伝えることは非常に重要です。
文系でIT未経験という立場は、専門知識が不足していると感じるかもしれません。しかし、ITの世界では新しい技術や知識がどんどん出てきて、既存のプロたちですら常に学び直しを求められています。だからこそ、「学び続ける姿勢」や「人と協力して課題を解決していく柔軟性」は大きな強みになり得ます。本書を通じて、未知の分野に飛び込む勇気や主体的にキャリアを切り開く心構えを身につけ、これからの就職活動やキャリア形成に活かしてみてください。自分のために働きつつ、組織や社会に対しても価値を提供できる—そんな理想的なワークスタイルを実現するための道筋を示してくれる一冊となるはずです。