本記事では、文系・未経験からIT業界を目指す方に役立つ視点を交えながら、岩本敏男氏の著書『パラダイムシフトを生きる』(きんざい、2023年3月29日)の内容を整理し、書評としてまとめています。
本書で語られる考え方や視座は、IT業界でのキャリア形成や就職活動、さらにはNTTデータの選考に臨む際にも大いに役立つものばかりです。ぜひ参考にしてください。
1. 書籍の概要
1.1 タイトル
『パラダイムシフトを生きる』
1.2 著者・出版社
- 著者:岩本 敏男
- 出版社:きんざい
- 出版年月:2023年3月29日
著者の岩本敏男氏は、NTTグループに長年在籍し、イノベーション推進やデジタル・トランスフォーメーション(DX)の最前線をリードしてきた経験を持つ人物です。特にNTTデータでの豊富な経営経験から、デジタル社会における変化の本質や、新たな価値創造のための考え方を示唆に富んだ形で展開しています。
1.3 本書が取り扱う主な内容
本書では、私たちが今まさに直面している「パラダイムシフト」、すなわち社会やビジネスの根本的な仕組みが大きく変わる時代をどのように生きるかがテーマとなっています。デジタル技術やITインフラの急速な進歩だけでなく、コロナ禍後のニューノーマルや社会構造の変化によって、「従来の常識」が通用しなくなる場面が増えてきました。そうした環境の中で、生き残り、さらなる飛躍を目指すためには「新しい視点」「新しい仕事の進め方」を身につけなければなりません。
岩本氏は、NTTデータで培った実践的な知識をもとに、これからのリーダーシップや企業経営がどう変わるか、個人のキャリア形成には何が求められるかを具体的な事例とともに解説しています。IT企業のみならず、あらゆる業界で通用する「変化対応力」や「新たな価値創造」の重要性を実感できる内容となっています。
1.4 本書の特徴
- 経営者目線と現場目線の両面が融合
岩本氏は経営陣としての視座と、技術者や現場社員とのコミュニケーションの中で得られた学びを両軸で語っています。そのため、大局的な経営戦略の話だけでなく、実務者や新人の立場にも応用できる考え方がバランス良く紹介されています。 - 具体的な事例・エピソードが豊富
ITプロジェクトの成功・失敗談や、新規事業の立ち上げで得た示唆などが具体的に描かれています。これによって「自分ならどうするか」と想像しやすく、読んだ後の行動に移しやすいのが特徴です。 - 複数のパラダイムシフトを取り上げている
たとえば「デジタル技術の進化」「組織のフラット化」「テレワーク普及による働き方改革」など、同時並行的に起きている変化を俯瞰し、それらがもたらすインパクトを総合的に考察しています。 - 未来志向のキャリア形成への提言
就職活動や転職を考えている読者にも有益な「自己変革のヒント」が多く含まれています。新卒・中途を問わず、「今後の社会はどう変化し、そこにどう適応していくか」を学ぶうえでも示唆に富む内容といえます。
2. おすすめポイント
2.1 「変化」が前提の時代を生き抜くマインドセット
本書の大きなテーマは「変化は避けられない」という認識です。特にIT業界では技術のトレンドが目まぐるしく変わりますが、著者は「変化があるから面白い」「変化をチャンスに変える思考が大切」と繰り返し強調しています。文系・未経験であっても、こうしたマインドセットを身につけるだけで、学びの吸収力や行動力に大きな差が生まれると感じられるでしょう。
2.2 リーダーシップとフォロワーシップの新たな形
著者が語るリーダーシップ論は、“上から指示する”という旧来のイメージを覆すものです。現代では、チーム全員が主体的に考え行動し、それぞれがリーダーシップとフォロワーシップを柔軟に切り替えていく必要があると説かれます。これは職位や経験に関係なく、誰もがリーダーシップを発揮する場面が訪れるということであり、特に新社会人になる方々にとっては自分の役割を再定義するヒントになるでしょう。
2.3 具体事例から学べる失敗と成功の要因
本書では、企業内での新規事業開発や大規模ITプロジェクトなどを例に、「なぜ失敗したのか」「なぜ成功に導けたのか」を具体的に解説しています。たとえば、「プロジェクトメンバー間のコミュニケーション不足」や「技術的なリスクへの過小評価」などは、未経験者や新入社員が陥りがちな落とし穴です。こうしたリアルな事例は、読者が自分自身の学びに結び付けやすいメリットがあります。
2.4 個人のキャリア開発と“企業文化”への適応
著者は「どのような企業文化の中で働くか」を選ぶことの重要性を強調しています。企業が変化に強い文化を持っていると、個人のスキルアップや新しいチャレンジへの挑戦を後押ししてくれます。一方で、変化を受け入れにくい組織では、せっかくの意欲や新しいアイデアが埋もれてしまう可能性があります。就活においては、待遇や知名度だけでなく、「企業がどのように変化に取り組んでいるか」を見極める視点を持つことが重要だと説いています。
3. 文系・未経験からのIT就活への活かし方
3.1 「変化前提」で自己学習の継続を計画する
文系であっても、ITに関する基礎的なスキルは今後どんな職種でも重要になってきます。本書が繰り返すように、変化が当たり前の時代だからこそ、「学び続ける意欲」を持つことが大切です。具体的には、オンライン学習プラットフォームでプログラミングやAIの基礎を学んだり、ビジネスやIT関連の勉強会に参加したりするなど、自ら学習を継続する計画を立てましょう。
3.2 コミュニケーション力を“デジタル”と結びつける
IT企業にとって、単に技術力だけが重要なのではなく、「技術を活かしてビジネス上の課題を解決する力」が求められます。文系の強みとして、「文章力」「論理的思考力」「対人コミュニケーション力」が挙げられますが、それらをデジタル技術と組み合わせて発揮する意識を持つことが大切です。本書にもある通り、社内外のステークホルダーと円滑にコミュニケーションを取り、技術的背景を丁寧に説明しながらプロジェクトを前に進める能力が、IT業界では非常に重宝されます。
3.3 チームの中で柔軟なリーダーシップを発揮する
「自分は新人だからリーダーシップなんて…」と尻込みするのではなく、文系・未経験であっても、チーム内で率先して意見を出したり、タスクを整理したりすることで“リーダーシップ”を発揮する機会は多くあります。本書が示すように、現代ではリーダーとフォロワーが固定化されるのではなく、必要に応じて役割が切り替わるのが当たり前の時代です。自分から行動し、新たな価値を生む提案をする姿勢が評価につながります。
3.4 “社会を俯瞰する視点”を意識的に養う
IT業界に限らず、パラダイムシフトが起きる背景には様々な社会課題や経済動向が存在します。AIの台頭、DXの加速、環境問題、労働人口の変化などを総合的に理解しておくと、就職活動の面接やグループディスカッションでの意見に深みが増すでしょう。本書で取り上げられる社会構造の変化を踏まえ、ニュースや関連書籍を読むといった形で、常に俯瞰する癖をつけることが文系・未経験の強みを最大化するポイントです。
4. NTTデータの選考への活かし方(4つ)
著者の岩本氏が活躍してきたNTTデータは、日本を代表するITソリューションプロバイダーです。多種多様な業界のシステム開発やコンサルティングに関わり、グローバルにも事業を展開しています。本書の内容は、NTTデータの企業文化や価値観を理解するうえでも非常に有用です。
4.1 「変革意識」を行動で示すエピソードを準備する
NTTデータでは、新人のうちから主体的に業務改善や新しいアイデアの提案を期待される文化があります。選考では、自分がこれまでに「困難な状況をどのように乗り越え、そこから何を学んだか」「新しい取り組みをする際にどんな工夫をしたか」を具体的に示せると評価が高まります。本書の「変化前提」「変革意識」というキーワードを意識し、自分の経験と結びつける準備をしておきましょう。
4.2 ITの本質は「技術」よりも「課題解決」であると理解する
NTTデータでは、多岐にわたる業界のクライアント課題をIT技術で解決することがミッションです。本書の事例でも語られるように、技術そのものよりも「どのように社会や企業の課題を解決するか」が重要視されます。面接でも「どんな技術が使えるのか」だけでなく、「その技術を使って何を実現したいか」「どんな価値を提供できるか」を意識して語ることで、企業研究の深さと自分の意欲をアピールできます。
4.3 グローバルな視点とコミュニケーション力をアピールする
NTTデータは海外にも多くの拠点を持ち、グローバルプロジェクトを数多く手がけています。本書でも、海外事例と日本企業の働き方の違いが触れられ、変化を受け入れる柔軟性の大切さが強調されています。文系・未経験であっても、語学力や異文化コミュニケーションの経験、留学経験などを組み合わせて、グローバルな視点を持っていることをアピールすれば、大きな強みになるでしょう。
4.4 チームを率いるだけでなく、支える視点も大切
著者が提唱する新しいリーダーシップ観は、NTTデータのチームワーク重視の社風にも通じます。単に「自分がリーダーシップを発揮しました」というエピソードだけでなく、「メンバーをしっかりフォローし、プロジェクト全体を円滑に進めました」という側面をアピールするのも効果的です。面接で「チームでの成果を最大化するために自分が果たした役割」を丁寧に説明できれば、チームプレーヤーとしての資質を評価してもらいやすくなります。
5. まとめ
『パラダイムシフトを生きる』は、IT業界のみならず、あらゆる業界のビジネスパーソンにとって「変化の時代を生き抜くための行動指針」を与えてくれる一冊です。とりわけ文系・未経験からIT業界への就職を考えている人には、ITリテラシーの習得やプロジェクトマネジメントの実際だけでなく、新しい価値を生み出していくうえで必要なマインドセットが身につくでしょう。
具体的には、「変化を前提とした自己学習」「コミュニケーション力とテクノロジーの融合」「誰もがリーダーシップを発揮する時代における自分の立ち位置の確立」など、本書を読むことで得られる示唆は多岐にわたります。さらに著者の経験が反映された内容からは、NTTデータという企業の社風・文化や、人材に求める素養についても多くのヒントを得られます。
就職活動やキャリア形成を考えるにあたっては、社名や知名度、待遇だけでなく、「これから大きく変わっていくビジネス世界の中で、どのように自分自身も成長し、価値を提供できるか」を考えることが重要です。本書で示されるパラダイムシフトの波を捉え、柔軟な思考と行動力で未来を切り開く姿勢を身につけることこそ、これからのIT就活の大きな武器となるはずです。文系・未経験だからこそ、しっかりと学び、行動し、変化を楽しむ“しなやかな強さ”を手に入れてください。