【書評】SCSKのシゴト革命

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本記事ではITサービス企業であるSCSKが取り組んだ「働き方改革」や「イノベーション創出」の事例を中心に、その成果や背景にある考え方をまとめた『SCSKのシゴト革命』を紹介します。一般的に「IT企業の働き方改革」や「生産性向上のための施策」というと、テレワークや時短勤務などの制度導入の話が多い傾向にあります。

本書では、それら制度面だけでなく、組織文化やマインドセットの変化、さらには企業としての戦略と事業活動のあり方まで踏み込んで解説されているのが特徴です。SCSKがどのようにして社員の意識や業務プロセスを革新し、実際の成果を出してきたのかを学ぶことで、「IT企業は具体的にどんな仕事をしているのか」「ITを活用してどんな働き方や社会変革が生まれうるのか」をイメージしやすくなります。

1. 書籍の概要

1.1 タイトル

  • 書名:『SCSKのシゴト革命』

1.2 著者・出版社

  • 著者:日経BP総研 イノベーションICT研究所
  • 出版社:日経BP
  • 出版年月日:2017年11月4日頃

IT業界のトレンドや企業事例を多く取り扱っている日経BP総研 イノベーションICT研究所が手がけていることから、客観的かつ実践的な視点でまとめられているのが大きな特徴です。

1.3 本書が取り扱う主な内容

  1. SCSKにおける働き方改革の背景・経緯
    • SCSKがどのような課題意識を持ち、なぜ働き方改革に取り組み始めたのか。
    • 生産性向上や社員満足度向上だけでなく、企業としての競争力向上を目指す狙い。
  2. 具体的な施策・制度の導入事例
    • 営業・開発・管理部門など、部署を横断した全社的な業務改善・ツール導入。
    • 時短勤務・フレックス・テレワークなど柔軟な勤務形態の推進。
    • RPAやクラウドなど新しいIT技術の活用とその効果。
  3. 文化・風土・マインドセットの変革
    • 単なる制度の施行ではなく、企業文化の変化をどう実現したのか。
    • 経営トップや現場リーダーのリーダーシップ、社員一人ひとりの意識改革の方法。
  4. 成果と今後の課題
    • 働き方改革により得られた生産性向上やコスト削減、社員満足度向上の具体例。
    • 改革の過程で浮かび上がった新たな課題と、その対策・展望。

1.4 本書の特徴

  • 事例研究としての実用性
    SCSKの取り組みを軸に、働き方改革やIT活用に関する具体例が豊富に紹介されています。実際のプロジェクトの進め方や導入後の効果測定など、ビジネス実務にも応用しやすい情報が多いです。
  • 経営視点と現場視点の両立
    経営者や管理職から見た戦略的な狙いと、現場の社員が抱いたリアルな声の両面が描かれており、トップダウンとボトムアップがどのように噛み合ったかがわかります。
  • IT企業の内情を知ることができる
    SCSKはシステム開発やITコンサルティング、アウトソーシングなど幅広い事業領域を手がけています。そのため、IT企業の仕事内容やプロジェクトマネジメントの様子も理解しやすくなります。
  • 企業文化改革のプロセスに焦点
    ワークスタイルや評価制度の変更など、組織風土を変えようとする際に生まれがちな抵抗や乗り越え方を具体的に知ることができる点も有益です。

2. おすすめポイント

ここからは、実際に本書を読んで特に印象的な点や、「文系・未経験からIT業界に挑戦したい」という方にとって役に立つと思われるおすすめポイントを4つ紹介します。

2.1 働き方改革の“リアル”を知れる

世間では「働き方改革」という言葉が広く浸透していますが、企業がどこまで実践し、どのような手法で成果を出しているかは千差万別です。本書では、SCSKが自社の働き方改革プロジェクトをどのように進めたかをかなり詳細に解説しています。単に「制度を導入しました」だけでなく、導入時の失敗や社員の反発・戸惑い、そしてそれを乗り越えるための工夫が率直に書かれているのが特徴です。実際の苦労と成果の両方を知ることで、働き方改革の本質や難しさ、そしてやりがいをつかみやすくなります。

2.2 ITを活用した生産性向上策のヒントが得られる

SCSKはシステムインテグレーターとして、顧客企業のIT環境を構築・運用するだけでなく、自社内でも積極的にITを活用しています。本書には、クラウドサービスやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、テレワーク支援ツールなど、最新のITソリューションをどのように導入し、実際に業務効率化や生産性向上を実現したかが具体的に紹介されています。文系・未経験の方がIT就活を進める上で、ITによる業務改善の事例を知ることは、企業理解や自己アピールに生かせる大きな武器となるでしょう。

2.3 企業文化やマインドセットを変えるプロセスが分かる

制度やツールを導入するだけでは、組織変革や働き方改革はうまくいきません。本書で描かれているSCSKの成功要因の一つは、トップが明確なビジョンを打ち出し、現場のリーダーが社員と対話を重ねながら納得感を得ていった点です。さらに、社員同士で仕事のやり方や意識を徐々に変えていき、最終的にSCSK全体の企業文化に定着させたプロセスは、多くの組織にとって参考になるはずです。これは文系出身者にも大変重要で、ITの知識だけでなく、人や組織のマネジメントやコミュニケーションに関する視点を得るきっかけになるでしょう。

2.4 IT業界の幅広い職種・業務をイメージできる

本書では働き方改革の事例だけでなく、SCSKがどのような事業を展開し、社員がどのような業務をしているのかも垣間見えます。営業、コンサルタント、システムエンジニア、プロジェクトマネージャー、カスタマーサポートなど、多様な職種の役割や仕事の進め方が紹介されることで、「IT業界=プログラミングだけ」というイメージが払拭されるでしょう。文系・未経験の方にとっては、自分が将来どんなキャリアを描けるかを考える上で、より具体的なビジョンを得る助けになります。

3. 文系・未経験からのIT就活への活かし方

ここからは、文系・未経験でIT業界に興味を持ち、就職活動を進めたい方が、本書から学んだ内容をどのように活かしていけるかを4つの視点で解説します。

3.1 「ITによる課題解決」の具体例として活用する

IT業界を志望する際、面接やESなどで「ITを通じてこんな課題を解決したい」「ITに可能性を感じる」などの動機を述べることが多いでしょう。本書を読むことで、SCSKが社内外の課題を具体的にどのようなIT技術で解決しているかがわかります。自分の言葉で「この書籍で学んだ解決策を、他の業界・企業に応用できるのでは」といった形で意見をまとめると、説得力のある志望動機や自己アピールにつながります。

3.2 働き方改革に対する自身の考え方を整理する

就活では「あなたはどんな働き方を理想としますか?」や「ワークライフバランスについてどう考えますか?」といった質問を受ける機会があります。本書を通じて「働き方改革は単なる制度導入にあらず」「生産性向上やモチベーションアップを目指すための総合的な取り組み」という理解が得られれば、自分なりの働き方観を整理できます。IT企業がなぜ働き方改革を推進するのかを踏まえつつ、企業と求職者が相互に納得できる関係を築くヒントになるでしょう。

3.3 組織変革・マネジメントの基礎を学ぶ機会にする

文系出身者の強みの一つに、コミュニケーション能力やマネジメント志向が挙げられます。しかし未経験からITに飛び込むとなると、どうしても技術知識ばかりに目が向きがちです。本書では、組織変革を推進する上でどのようなリーダーシップが必要か、現場と経営層の連携がどのように行われるのかが具体的に紹介されています。IT業界でもプロジェクトを成功させるには人や組織のマネジメントが不可欠です。その基礎となる考え方を本書で学ぶことで、文系ならではのアプローチを武器にできるでしょう。

3.4 自分の将来像を多角的に描く

SCSKはシステム開発だけでなく、コンサルやアウトソーシング、ソリューション提案など多岐にわたる業務を手がけています。本書に登場する社員の事例を通じて、IT業界の職種には多種多様な可能性があるとわかるはずです。文系であっても、プロジェクト全体のマネジメント、顧客折衝、営業、コンサルティングなどで活躍できる道が開けています。「自分はIT業界でどのように成長していきたいのか」を具体的にイメージしやすくなり、就活におけるキャリアビジョンの描き方がはっきりしてくるでしょう。

4. SCSKの選考への活かし方

ここではSCSKの選考を受ける際に、本書で学んだことをどう活かすかを4つの視点で紹介します。

4.1 企業理念や文化への理解を深める

SCSKは「お客様の満足」「社員の満足」「社会の満足」を追求する「三方よし」を掲げており、さらに働き方改革などを通じて社員がやりがいを持てる環境づくりに力を入れています。本書を読むことで同社の理念や文化を深く知ることができます。その理解をもとに面接やESで「SCSKのどの部分に共感し、どのように貢献したいか」を具体的に伝えると、企業との相性をアピールしやすくなります。

4.2 SCSKの実際の事業内容に即した志望動機を組み立てる

IT企業への志望動機は抽象的な言葉に終始しがちですが、本書を読むとSCSKの具体的な業務領域や強みがわかります。例えば、「アウトソーシングのノウハウを活かし、顧客企業のコア業務への集中をサポートしている点に魅力を感じた」「RPAやクラウドなどの最新テクノロジー活用に積極的な社風に共感した」など、自分がどの領域に関わりたいのかを明確化できます。これらを軸に志望動機を語ることで、自分のやりたいことと企業の強みが合致していることを示せます。

4.3 働き方改革に対する自分の考えをプレゼンする

SCSKの選考では、面接官から「働き方改革や組織の在り方をどう考えるか」を問われることも十分考えられます。本書で学んだSCSKの事例を踏まえ、「単なる短時間労働や休暇推奨ではなく、生産性を高めるための組織・業務改革が重要」などの観点を自分の意見として整理しておくと説得力が増します。実際にSCSKが取り組んだ施策を参照しながら、自分ならどのように活かせるかを話すと、面接官にも真剣に企業研究をしている姿勢が伝わるでしょう。

4.4 自らの成長ビジョンを描く材料にする

SCSKが取り組んだ改革事例をもとに、「自分がSCSKで学びたいこと」「将来的に実現したいプロジェクトや目標」を具体的に語れるようにしましょう。例えば、「プロジェクトマネジメントスキルを高め、働き方改革を支える社内ツール導入に携わりたい」「顧客企業の課題をヒアリングしながら、ITを使って解決策を立案するコンサルタントを目指したい」といった形です。具体的なビジョンを語れる学生は企業側から見ても魅力的であり、自分のキャリアアップのプランも明確になります。

5. まとめ

『SCSKのシゴト革命』は、SCSKが自社の働き方改革を通じて得た知見を惜しみなく紹介しており、IT業界の「仕事のリアル」を捉える上で非常に参考になる一冊です。文系・未経験の方にとっては、IT企業の具体的なビジネスモデルや業務プロセスがわかるだけでなく、組織変革やマネジメントの視点も学ぶことができるため、就職活動の準備としても最適と言えるでしょう。

IT業界は技術そのものが注目されがちですが、それを活かすための組織文化や働き方、リーダーシップといった“ソフト面”の重要性も高まっています。本書はまさにその点を強調しており、ITの知識に自信のない方でも読みやすく、かつ業界研究に十分役立つ内容です。

SCSKへの志望を考えている方はもちろん、他のIT企業やコンサルティング企業、さらには一般企業のシステム部門などを視野に入れている方にとっても、具体的な改革事例や事業展開の方法を学べる貴重な機会となるはずです。本書で得た学びを活かして、自身のキャリアビジョンを深め、就活をさらに充実させていただければと思います。今後のIT就職活動に向けて、一度手に取ってみる価値のある良書として、ぜひおすすめします。

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